エンジンに空気とガソリンの混合気を送り込むキャブレター。一般的なモデルであればキャブレターは1つだが、2つ、3つ載せているモデルもあった。さらに当時のカタログを見るとツインキャブ・2バレルとの表記も多い。これはどういうものなのか、解説していこう。

キャブを連装してより多くの混合気を送り込む

画像: トヨタ パブリカ・スターレット1200STのエンジンルーム。長円形のエアクリーナーの下に2つのダウンドラフト式キャブレターを装着し、エンジンパワー向上を図っている。

トヨタ パブリカ・スターレット1200STのエンジンルーム。長円形のエアクリーナーの下に2つのダウンドラフト式キャブレターを装着し、エンジンパワー向上を図っている。

通常のグレードのエンジンであればエンジン1つに対してキャブレター(以下、キャブ)は1つ。事実上、走行するのにはこれで十分だ。ただし、エンジン本体に手を加えずにパワーアップするためには、多くの混合気を効率よくエンジンに取り入れることが必要になる。そこで誕生したのがエンジン1つにキャブを2つ備えた形式、それがツインキャブだ。

キャブを2つ装着すれば、1つの場合より、より多く効率的にシリンダー内へ混合気を送り込むことができる。手っ取り早くパワーを上げるためには良い手段といえる。直列4気筒エンジンにツインキャブというのが、昭和のクルマの走りの良さの証のようなものだった。

画像: トヨタ スターレット1200ST(KP47型)。ツインキャブ仕様は77psを発生した。

トヨタ スターレット1200ST(KP47型)。ツインキャブ仕様は77psを発生した。

また、とくに直列6気筒エンジンでシングルキャブレターを採用した場合、インテークマニホールドが長くなり、しかも曲がりくねることになるので混合気の流れも良くない。そこで複数のキャブを使って流れを良くするというのは非常に効果的な方法だった。吸気口を増やすという意味だけでなく、流れを良くするという効果もあるわけだ。

ツインキャブの中でも、とくにSU、ソレックス、ウエーバーのツインキャブというのは、キャブレターのブランドとして人気があった。詳しくは、この連載の中で紹介していこう。

2バレルキャブレター

画像: 2バレルキャブレターを上から見たもの。プライマリー系バレル、セカンダリー系のバレルが2本通っている。それぞれにスロー通路、メイン通路を設けて使い分ける。

2バレルキャブレターを上から見たもの。プライマリー系バレル、セカンダリー系のバレルが2本通っている。それぞれにスロー通路、メイン通路を設けて使い分ける。

また、キャブには2バレルと呼ばれる方式もある。空気通路の本管をバレルというが、シングルキャブでもこのバレルを1つよりも2つ、あるいは4つと多くした方が多くの混合気をシリンダー内に送り込める。

キャブレターは、広いエンジン回転域を1つのジェットでカバーするのは現実的に難しい。そこで1つのバレルの中で口径の異なる複数のジェットを使い、負荷状況やスロットルバルブの開度に応じて、メインジェットやスロージェットを使い分けガソリンを吸い出す。この系統を2ステージと呼ぶ。

画像: マツダ ルーチェ・ロータリークーペのエンジンの4バレルキャブは2ステージ仕様だった。

マツダ ルーチェ・ロータリークーペのエンジンの4バレルキャブは2ステージ仕様だった。

これはマツダ ルーチェ・ロータリークーペのエンジンで、4バレルキャブだった。コスモスポーツやファミリアロータリークーペなどのモデルも同様。

さらに1つのバレルだけではカバーしきれない場合もあるので、1つのキャブレターで2つの空気の通り道を作ったのが2バレルキャブレターということになる。多くの混合気を取り入れるのには、大きな通り道を1つ作るという考え方もあるが、それだと空燃比や混合気の均一性など、制御が難しい面がある。2バレルはそういうときにも都合がいい。

レシプロエンジンの場合は1つのキャブレターで2バレル、ツインキャブでは2バレル×2の4バルブというのが多かった。ロータリーエンジンの場合には、4バレル2ステージのシングルキャブレターが用いられた。

画像: スバル レオーネ クーペ1400RXの1.4L水平対向4気筒エンジンには、2バレルキャブが2つ搭載されていた。

スバル レオーネ クーペ1400RXの1.4L水平対向4気筒エンジンには、2バレルキャブが2つ搭載されていた。

ツインキャブや2バレルといったメカニズムがDOHC以前にこうしたメカニズムが昭和の若者の心を捉えたのだ。(文:Webモーターマガジン編集部 飯嶋洋治)

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