高性能車のエンジンにつきものだったソレックス、ウエーバーといったキャブレター。昭和のクルマではあこがれ以外のなにものでもなかった。それらはどんな機構でどんな特徴があったのかを解説しよう。

高性能キャブレターの代名詞となったソレックスとウエーバー

ソレックスはフランス、ウエーバーはイタリアのキャブレターメーカーになる。

そのなかでもソレックスは日本で三國工業がライセンス生産をしていたので、「ミクニソレックス」とも呼ばれる。これが特に、国産の高性能車の多くに装着された理由だ。トヨタの2T-GのようなDOHCエンジンにも装着されていた。

もうひとつ、ウエーバーはS54スカイライン2000GTに採用されるなど、さらにレース専用というイメージがあった。

ソレックスとウエーバーのキャブレターはともに、固定ベンチュリー式の機構を採用するなどの共通点も多い。ここではその特徴をもう少し詳しく見ていこう。

画像: カリーナ1600GTの2T-Gエンジンのソレックス ツインキャブ。エンジンのシリンダーヘッド横のメカメカしい佇まいが憧れの的だった。

カリーナ1600GTの2T-Gエンジンのソレックス ツインキャブ。エンジンのシリンダーヘッド横のメカメカしい佇まいが憧れの的だった。

これらのキャブレターの大きな特徴としては固定ベンチュリーで低速用のステージの設定がないことが挙げられる。キャブレターの説明で書いたような低速、高速に対応する2ステージなどの機構を持たず、高速に特化しているのだ。

また吸入効率追求のため、吸気通路で抵抗となるチョークバルブをもたない。それだけ高回転を重視しているということだ。ただし、そのままでは冷間でのエンジン始動が難しいため濃い混合気供給する系統を備えている。

そしてマニアに受けたのがジェット類の交換が簡単にできることだ。エンジンのチューニング度合いや仕様用途に合わせて適切な口径のジェットとすることで、性能を存分に発揮できる。逆にこれがうまく行かないと、エンジンの性能を活かしきれないという難しさも持っていた。細かいところでは、スポーツ走行で横Gがかかったときにできるだけ油面が変化しないように双子型フロートを採用していることもある。

フェアレディZ432Rはソレックスキャブを3連装していた。エアクリーナー無しで、ファンネルのみとなっているのは、レーシングカーのようだ。

急加速時に備えて、大容量のダイヤフラム式加速ポンプで多くのガソリンを供給できるようになっているなど、アクセルペダルを踏んだ分だけリニアにガソリンを増量するタイプになっているのも特徴だ。低速用ステージの設定がないという構造を知らずにアクセルペダルを踏みすぎれば、燃料供給が過多になってしまい上手く加速できなかったり、プラグが「かぶる」などの現象があらわれることもある。乗りこなすにはドライバーを選ぶという面もあるのだ。

フェアレディZ432Rにはソレックスキャブの3連装が装着されていた。

高出力、高回転時に威力を発揮するので高性能市販車やレースマシンに多く用いられていったが、燃料噴射装置(インジェクション)が普及するにつれて姿を消していった。今でもマニアが存在するのは、それだけ「自分で調整できる」という自由度が高いからでもある。(文:Webモーターマガジン編集部 飯嶋洋治/参考文献:自動車のメカはどうなっているか エンジン系・グランプリ出版)

This article is a sponsored article by
''.