可変ベンチュリーのキャブレターにも種類がいくつかある。前にも紹介したSUキャブレターと、今回のCVキャブレターだ。一見似ている形をしているのだが、CVキャブレターのほうが進化している。ここではなにが違うのか解説してみよう。

ホンダS800にも使われた!CV型キャブレターとは何か?

以前に紹介したSUキャブレターと同じ可変ベンチュリーのCV型キャブレターだが、ちょっと構造が違う。SUキャブレターはフレキシブルだが、ソレックスやウエーバーほどの高性能なイメージはなかった。それは、急加速時に濃いめの燃料を吹いてやる加速ポンプを持っていないため、急加速時に最適な混合比を得にくい構造だったからだ。

ホンダS800のAS800EエンジンにはCVキャブが4連装された。SUキャプをよりスポーティにした機構を持つ。

CVというのはコンスタント ヴェロシティ(Constant Velocity/「一定速度」という意味)の頭文字をとったもので、吸入負圧の変化に応じてキャブレターのベンチュリー口径が変化し、スロットルバルブでの開き具合に関係なくベンチュリー部での空気流速をほぼ一定にできることから、そう名付けられた。

日本のケイヒン製のCVキャブレターはSUキャブレターの弱点を改善したものと言える。SUキャブレターと同じように負圧で作動するピストンを持ち、加速ポンプを付け加えた。さらにメイン系統とスロー系統を持つ2ステージタイプになっていて、メインジェットはSUキャブレターと異なり可動ピストンによるニードルジェットではなく、別のメインジェットノズルからあらかじめ空気の気泡が混合されたガソリンの状態で吸い出される。

CV型キャブレターの構造

画像: 1991年にホンダインテグラなどに採用された2連装備のCV型キャブレター(図:「自動車のメカはどうなっているか エンジン系(グランプリ出版)」)より転載。

1991年にホンダインテグラなどに採用された2連装備のCV型キャブレター(図:「自動車のメカはどうなっているか エンジン系(グランプリ出版)」)より転載。

ニードルジェットも備わるのだが、それはメインに対して補助的に使われるもので、可動ピストンが大きく動いたときに燃料の補助供給をする。CVキャブレターをざっくり表現すれば「SUキャブレターをよりスポーティかつ現代的にしたもの」といえるだろう。

スズキ フロンテSSにはCVキャブが3連装されスポーティな走りで人気だった。

ちなみにCV型キャブレターは可動ピストンが縦向きのサイドドラフト(吸気が横向きに行われる方式)だったが、トヨタのV型キャブレターは可動ピストンを横置きとしたダウンドラフト。それでも基本的な考え方はCVキャブレターと同じだ。

国産名車の代表ともいえるホンダ S800では、4気筒DOHCエンジンにCVキャブレターを4連装することで、70psを発生。スズキ フロンテSSも2ストローク直列3気筒エンジンに3連装することで、360ccながら36psを実現していた。(文:Webモーターマガジン編集部 飯嶋洋治/参考文献:「自動車のメカはどうなっているか エンジン系(グランプリ出版)」

スズキ フロンテSSに採用されている空冷直3 2ストロークエンジンにはCV型キャブが3連装されていた。

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