メルセデスEQの最新BEV「EQA250」とメルセデスAMGのSUVとしては買いやすい価格と適度な高性能を両立した「GLA35 4マティック」。いま選ぶのであればどちらが正解なのかをじっくりと乗り比べて考えてみた。(Motor Magazine2021年9月号より)

似たフォルムのEQAとGLAしかし相違点は意外と多い

カテゴリーを示す2文字のアルファベットに、所属クラスを表現する1文字を加えた名称で紹介されるようになって久しい、メルセデス・ベンツのモデル群。次々とニューモデルが登場した今になって振り返れば、とくにSUVにおいてはそうしたネーミングルールの変更は、すこぶる賢明な戦略であったと思えるものだ。

たとえば、2019年にブランニューモデルとして発表されたGLBが、「GLAとGLCの狭間に位置する存在」であるのは一目瞭然。そもそも、昨今続々と追加されたSUVに規則性のあるネーミングが採用されていなかったなら、受け入れる顧客はもとより送り出すメーカー側も名称の乱立で混乱の極みに至っていた可能性すら十分考えられたはずである。

かくして、その名称を耳にした段階で「これはメルセデスSUVの末っ子モデルだナ」と予想できるのが、今回取り上げる1台であるGLA。2019年末に発表され、翌2020年の半ばからは日本への導入もスタートした現行2代目モデルは、初代モデルに漂った「SUV仕立てのハッチバックモデル」という雰囲気を、一挙に10cm以上増した全高などにより一新。より本格的なSUVという風味を増し、自ら謳う『都市型SUV』としての存在感を強くアピールすることが大きな特徴だ。

今回テストした『GLA35 4マティック』は、日本で当初ディーゼルモデルのみがローンチされたGLAに、メルセデスAMGから「世界でもっともパワフルな2直4ターボエンジンを搭載」と謳われる『GLA45S 4マティック+』とともに追加設定されたハイパフォーマンスモデル。

45Sの、わずか4.3秒という0→100km/h加速のタイムにこそ敵わないものの、5.1秒という数値は一級スポーツカーレベル。一部ADAS機能やタイヤサイズ、標準採用のシート表皮などに差があるとはいえ、190万円以上も低い価格を実現している。

実際、SUVでありながらも走りのシーンを問わず「胸のすく加速」を十分に堪能させてくれるのが、その動力性能の実力。選択する走行モードによってはアクセルオフ時の派手なバブリングノイズが耳に届くなど、時に演出過多と思える場面もあるが、4気筒らしからぬ迫力のサウンドや高回転にかけても伸びの良いフィーリングなどがスポーティ。なるほどAMGの名に恥じない印象だ。

画像: 左のGLA 35 4マティックに搭載される2L直4ターボは306ps/400Nmを発生、右のEQA 250には190ps/370Nmを発生するモーターが1基搭載。

左のGLA 35 4マティックに搭載される2L直4ターボは306ps/400Nmを発生、右のEQA 250には190ps/370Nmを発生するモーターが1基搭載。

一方、そんなGLAを骨格のベースに、ピュアEVを展開する「メルセデスEQ」のブランド名でローンチされたのがEQA。LEDライトストリップで左右コンビネーションランプ間を繋ぎ、ナンバープレートを下部に移したことで独自のイメージを発散するリアビューの採用など、巧みに特別感が演じられる部分もあるが、ボディサイズやホイールベースなどのスペックと同様に、基本的な外観イメージもベース車たるGLAのそれを踏襲。「この先、『普通の存在』となるであろうピュアEVをことさら区別しない」というポリシーを感じるところでもある。

充電ステーションの情報や出発前の空調コントロール設定など、ピュアEVならではのコンテンツが加えられた部分もあるものの、対話型インフォテインメントシステム「MBUX」を筆頭に、充実のADASやコネクティビティ機能などは、もちろんいずれもGLAに準じての標準採用となる。

一方、GLAと同様とはいかなかったのがパッケージング。容量66.5kWhとそれなりに大容量のバッテリーを、EV専用設計ではなくエンジン車から流用の骨格に搭載するため、「もっともしわ寄せを受けた」ポイントを、後席居住性とラゲッジスペースのボリュームに認められたからだ。

とくに、これは少々問題アリと言わざるを得ないのは前者。駆動用バッテリーの搭載で後席フロア面が上昇し、結果的にシートクッション高との差(ヒール段差)が減ったことで、いわゆる「体育座り」に近い着座姿勢を強要されるのが辛いところ。

一方、GLAにはパッケージオプションである「AMGパフォーマンスパッケージ」が装着され、そこに含まれる「AMGパフォーマンスシート」の高いシートバックが目前に立ちはだかり、足元空間やフロントシート下への足入れ性は確保されるものの圧迫感が強く、フロントシートに比べると後席居住性は「末席感」が強かった。

ところがEQAの場合には、標準シートの採用で目前の圧迫感こそないものの、前述「体育座り」に加えフロントシート下への足入れ性も奪われてしまうため、もはやシーティングレイアウトそのものが「2プラス2」と呼びたくなるものへ「改悪」をされることになってしまっていた。

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