少し我慢が必要なEQA。その走りはどうなのか
GLAを300kg以上も上回る2トン超の重量の影響もあって、一部のピュアEVが発揮をするような怒涛の加速力は備えない一方で、すべてのエンジン車と比較しても遥かに優れたアクセルレスポンスや、スタートの瞬間からの蹴りだしの強さはピュアなEVならではと言える魅力のポイント。
パドルを用いての回生減速力のコントロールも、慣れれば日常シーンでも使いやすいと思えたもの。最終的にはクリープ力が表れた時点で減速は終了となる制御のため、完全な「1ペダルドライビング」は不可能なものの、そうした停止寸前までは強めの回生力を発生させ続け、実質的にはほとんどブレーキペダルを用いずに済むモードや、逆に回生力をキャンセルしてコースティング状態を生み出すモードが選べる。
さらに、前走車との車間や道路勾配などを検知し、回生力を自動でコントロールするオートモードまでを採用することで、実走行時の使い勝手に優れていることにも感心させられた。
そんなEQAのフットワークのテイストは、良路ではいかにもメルセデスの作品らしく、納得の上質な仕上がり。ところが、専用デザインのボディキットや20インチタイヤなどとともに「AMGライン」のセットオプションに含まれるスポーツサスペンションの影響もあってか、段差やひび割れ路面に差し掛かると「劣化」の度合いがいささか大きく、少々興醒めという思いを抱かされた場面があったことも、偽らざる印象だった。
ちなみに、4WDのGLAに対してEQAはFWD。スタートの瞬間から最大トルクの発揮が可能なピュアEVと、加速時に駆動輪の荷重を奪われる前輪駆動方式とのマッチングは良いとは言えず、急ぎのスタートシーンでたちまちトラクションコントロール機能が介入をしながらも、メルセデスの作品に相応しいと言えない明確なトルクステアを感じる場面があるのも残念だった。
なるほど、自宅に充電設備を用意できるユーザーであれば、給油フリーでSUVを使うライフスタイルというのも新たな時代に向けての魅力とは映りそう。けれども、4WDが必須という人はもとより、同等以下の負担でさまざまなパワーユニットの選択肢を用意されるのであれば、やはり「普通のGLA」の方がリーズナブルという判断に間違いはなさそうだ。(文:河村康彦/写真:井上雅行)
メルセデスAMG GLA35 4マティック 主要諸元
●全長×全幅×全高:4440×1850×1585mm
●ホイールベース:2730mm
●車両重量:1690kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●総排気量:1991cc
●最高出力:225kW(306ps)/5800-6100rpm
●最大トルク:400Nm/3000-4000rpm
●トランスミッション:8速DCT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・51L
●WLTCモード燃費:11.6km/L
●タイヤサイズ:235/50R19
●車両価格(税込):702万円
メルセデスEQ EQA250 主要諸元
●全長×全幅×全高:4465×1835×1625mm
●ホイールベース:2730mm
●車両重量:1990kg
●モーター:交流誘導電動機
●最高出力:140kW(190ps)/3600-10300rpm
●最大トルク:370Nm/1020rpm
●バッテリー総電力量:66.5kWh
●WLTCモード航続距離:422km
●駆動方式:FWD
●タイヤサイズ:235/45R20
●車両価格(税込):640万円
最高級SUVのマイバッハGLSから、ゼロエミッションカーEQBまで
マイバッハシリーズに加わった至高のSUV
メルセデス・ベンツは、最高級ブランドのメルセデスマイバッハと、次世代を担う電動車ブランドのメルセデスEQから新型SUVをリリースした。
メルセデスマイバッハGLSは、メルセデス・ベンツのラインナップで最大のSUVであるGLSをベースに、内外装と走行性能をマイバッハクオリティに高めたモデルだ。日本に導入されたモデルは「メルセデスマイバッハGLS600 4マティック」で、その価格は2729万円。メルセデス・ベンツが日本で扱うSUVではもっとも高価なモデルだ。
エンジンは最高出力558ps、最大トルク730NmのV8ツインターボを搭載。後席はオットマンやマッサージ機能を備えた大型のキャプテンシートとし、乗車定員は4名という贅を尽くしたモデルだ。
扱いやすいサイズと7シーターを両立したBEV
一方、メルセデスEQの「EQB」は、EQAに続くBEVのSUVで、2021年4月に開催された上海モーターショーで発表された。ボディ形状はGLBに近いが、エクステリアのディテールにはEQに通じるデザインエッセンスが取り込まれている。バッテリー容量はEQAと同じ66.5kWhで、航続距離は最大で478km(NEDC)
と7名乗車を可能にするなど、実用性も十分なモデルとなっている。日本導入は早ければ2022年となる模様だ。