ニュルブルクリンク北コースで世界記録を達成
これまでカイエンのICE(内燃機関)搭載のトップモデル「ターボ」の最高出力は550ps、最大トルクは770Nmだった。だが昨今のビッグSUVにおけるパワーウォーズは留まるところを知らず、最高出力が600psを超えるモデルも増えている。
スポーツSUVの老舗であるポルシェとしても黙っていられなくなり、今回新たなトップモデルとして、「ターボGT」が追加された。クーペシリーズ専用に用意された4L V8ツインターボエンジンの最高出力はターボ、インタークーラー、インジェクションなど吸排気系の改良によって最高出力640ps、最大トルク850Nmを発生。8速ATと組み合わされ0→100km/h加速を3.3秒、200km/hまでは12.2秒でこなす。最高速度は300km/hだ。
この向上したカタログデータを証明するために、ポルシェはニュルブルクリンクの20.832kmの北コースでトライアルを行い、ラップタイム7分38秒9というSUVの世界記録を達成している。
スウェーデンのゴットランドで開催された試乗会に現れた22インチホイールを履いたカイエンターボGT クーペは、わずかに17mmほどローダウンしたスポーツシャシにもかかわらず全体の印象は低く精悍なものだった。インテリアはターボGTロゴが縫い込まれたヘッドレストを持った素晴らしいサポート形状のスポーツシートが待っていた。
元WRCウイナーも驚いた圧巻の進化
カイエン ターボGTのパワーは、わずか90ps/80Nmほどの増強とは思えないほど力強く、スムーズな8速ATを介してアッと言う間にスウェーデンの法定速度110km/hに達してしまう。リジディティが15%アップされたチャンバーのエアサスペンション、4WS、PASM(ポルシェアクティブサスペンションマネジメント)、PDCC(ポルシェダイナミックシャシーコントロール)などのすべてが高度に最適化されたおかげで、公道でもサーキットでも乗り心地とスポーティハンドリングのバランスの良さに驚かされた。
ポルシェのブランドアンバサダーを務めている元WRC覇者ヴァルター・ロールが、最初にこのターボGTに試乗した後、そのハンドリングに驚いた彼が、開発エンジニアに「君たちはこのクルマに、一体何をしたんだ?」と問いかける動画を見たが、試乗を通じて彼の気持ちが良く理解できた。
このターボGTはすでにドイツで予約注文が行われているが、日本でも2021年6月末からポルシェジャパンが2725万円の車両価格を公表して、受注が始まっている。
ポルシェ カイエン ターボGT 主要諸元
●全長×全幅×全高:4942×1995×1636mm
●ホイールベース:2895mm
●車両重量:2220kg
●エンジン:V8 DOHCツインターボ
●総排気量:3996cc
●最高出力:471kW(640ps)/6000rpm
●最大トルク:850Nm/2300-4500rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・90L
●燃費(EU準拠):14.1km/L
●タイヤサイズ:前285/35R22、後315/30R22
●車両価格(税込):2725万円