「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前のクルマは環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は、アメリカンブランドの電動セダン、フィスカー カルマだ。

フィスカー カルマ(2011年:日本未導入)

画像: ロングノーズ&ショートデッキのクーペスタイルだが4ドア。全長は4996mm、ホイールベースは3160mmもある。

ロングノーズ&ショートデッキのクーペスタイルだが4ドア。全長は4996mm、ホイールベースは3160mmもある。

カリフォルニアに本社を構えるフィスカー オートモーティブの「カルマ」こそ、世界でもっとも走行可能距離が長いEVだ。アメリカ生まれで、メルセデス・ベンツ級の高級感とBMW並みのハンドリングを備え、そしてマセラティが担当したような美しいデザイン。その上、最高にクリーンでエコな資質を備えている。つまり、いままでのEVとは立ち位置がまったく異なる。

システム総合出力は403ps! にもかかわらずプリウスよりCO2排出量は低く、燃費がいい。そんなカルマに、陽光あふれる南カリフォルニアで試乗することができた。

メルセデス・ベンツやBMWのコンバーチブルの改造を手がけていたフィスカー コーチビルド社のデンマーク人CEO、ヘンリック・フィスカーとビジネスパートナーのバーンハルド・コエラーは、2005年にクァンタム・テクノロジー社と出会った。代替エネルギーを開発するクァンタム・テクノロジー社は、アメリカ政府との契約で、敵陣に静かに侵入できるステルス自動車の開発も行ってきた。そしてフィスカーも、軍事用ではなかったが無音のEV開発に参入した。

フィスカー氏はただのCEOではなく、チーフデザイナーも兼ねている。じつは、これまでにアストンマーティン DB9やV8 ヴァンテージ、BMW Z8などを手がけてきた。それを聞けば、ヨーロッパの香り漂うカルマのデザインに、誰もが納得できるだろう。

しかも美しいボディの下、カルマ特製のアルミニウム スペースフレームのシャシに搭載されたEVドライブトレーンは、クァンタム・テクノロジー社がアメリカ軍用に開発してきたステルス自動車からアイデアを得たものだ。150kWの電気モーター2基とリチウムイオン バッテリーパックを搭載し、バッテリーだけで約80kmの走行が可能だ。

さらに、GM製の4気筒2Lターボ ガソリンエンジン(255ps)も搭載しており、これがバッテリーを充電する発電機となる。この充電により、さらに400km、つまり480kmも走行を可能にしている。

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