「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前のクルマは環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は、アメリカンブランドの電動セダン、フィスカー カルマだ。

発進時のトルクはブガッティ ヴェイロンを凌ぐ1330Nm!

画像: きわめてクオリティの高いインテリア。センターダッシュのディスプレイでさまざまな操作が可能だ。

きわめてクオリティの高いインテリア。センターダッシュのディスプレイでさまざまな操作が可能だ。

コクピットに着き、スタートボタンを押す。センターコンソールにある小さなピラミッド型のセレクターから「D」を選択すると、デフォルトのEVステルスモードが自動的に選択される。パドルでスポーツモードを選択すれば、エンジンで発電させることもできる。

スロットルペダルをめいっぱい踏み込むと、いきなり最大トルクの1330Nm!が発生する。これは、あのブガッティ ヴェイロン(1250Nm)を凌ぐ数値だ。加速は爆発的というわけではないが、十分以上だ。車両重量は未公開(2トンくらい?)だが、ステルスモードで0→100km/h加速は7.9秒、最高速度は155km/hと公表されている。

フィスカー オートモーティブでは今回の試乗用に特設の公道コースを用意していたが、そこを1周走るだけで、カルマのハンドリングの実力は明らかだった。鍛造アルミニウム製アームのダブルウイッシュボーン式サスと、セルフレベリング リアダンパーのおかげで、その走りはトップクラスの安定感を誇る。ステアリングの重さや手応えは適度で、前47:後53と重量バランスが優れており、ターンインはシャープで正確。限界域でもアンダーステアはほとんど出なかった。

ホイールベースは3.16mと超長く、タイヤはワイドな22インチのGY イーグルF1。これらが相まって、カルマは直線でもコーナーでもフラットな姿勢を保ち、フルブレーキングでもほとんどノーズダイブしない。コーナリングの限界は高く、それでもリアが流れ出してもクルマの動きは読みやすいので、スロットルワークとカウンターステアで修正は容易だ。

スポーツモードに切り替えると、エンジンが大きな音をたてて静寂は破られた。前輪の後ろに配されたエキゾーストパイプから乾いた音がする。このスポーツモードでは0→100km/h加速は5.9秒、最高速度は200km/hに達する。ブレーキはブレンボ製で前:6ポッド、後:4ポッド。制動力とペダル剛性は優れていて、耐フェード性もいい。

カルマの先進的な部分は、センターコンソールにもある。10.2インチの大きなタッチスクリーン上の簡単な操作で、エアコンやオーディオなど、ほぼすべてのコントロールができるのだ。

米国での基本価格は9万6850ドル(当時のレートで約814万円)だが、すでに3000台のオーダーが入っているという。フィスカーのマーケットは十分にあるという証拠だ。日本にも導入が計画されているというから、今後に期待したい。(編集部註:フィスカー オートモーティブは2013年に経営破綻し、日本には導入されませんでした)

画像: ブレーキの効きも良く、ターンインは正確。カルマはコーナリングも楽しいクルマだった。

ブレーキの効きも良く、ターンインは正確。カルマはコーナリングも楽しいクルマだった。

■フィスカー カルマ 主要諸元

●全長×全幅×全高:4996×1984×1330mm
●ホイールベース:3160mm
●車両重量:未公表
●エンジン種類:直4 DOHCターボ+モーター
●排気量:1998cc
●最高出力:188kW<255ps>/5900rpm
●最大トルク:349Nm<35.6kgm>/2000rpm
●モーター最高出力:300kW
●総合出力:296kW<403ps>
●総合トルク:1330Nm<135.7kgm>
●トランスミッション:無段変速
●駆動方式:FWD
●航続距離:80km(EVのみ)/480km(エンジン併用)
●タイヤ:前255/35R22、後285/35R22
●当時の車両価格(米国):9万6850ドル

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