フィアット車をベースにしたチューニングで一世を風靡、レースでも大活躍したアバルトが2007年9月に欧州で復活。2009年1月には、そのファーストモデルのアバルト グランデプントがいよいよ日本に上陸した。折しも新型MINIやポロの登場でコンパクトカーに大きな注目が集まる中、当時、アバルトはどんな価値を示したのだろうか。ここではコンパクトカー特集の中で行われたアバルト グランデプントの試乗の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2009年5月号より)

積極的なブランド展開で好調な新生アバルトが日本へ

こんな時代だからこそ、やはりコンパクトカーを選びたい・・・。といったような書き方はいろいろなところでされていて、それは確かにそう言えないことはないなとも思う。しかし一方で、こんな時代だろうとどんな時代だろうと、たとえばヨーロッパに行けばコンパクトカーは、何にも左右されず主流であり続けてきたじゃないか、なんて言いたい気持ちももたげてくる。

いや、そういう言い方も本当は正しくないのかもしれない。彼の地の人達は、常に自分が本当に必要とするクルマを選んできただけで、コンパクトカーが大勢を占めているのは、おそらくはその結果に過ぎないのだ。

ヨーロッパの人達は合理精神に富んでいて・・・なんてステレオタイプに言うつもりはないが、ことクルマ選びに関しては、独身だろうと子供達が巣立って行こうと、右へ倣えでミニバンに群がったかと思えば、今やハイブリッド狂想曲を奏でるのに夢中な我が国とは違って、地に足のついた選び方をしているというのは、おそらく事実だろう。

そんな風に選ばれているクルマだけに、ヨーロッパのコンパクトカーが、「安かろう悪かろう」なわけがない。何しろ、そのサイズは「格」を表すわけではなく、いわば生活サイズを表すだけに過ぎないのだから。

そして、それゆえにヨーロッパのコンパクトカーには、単にサイズがコンパクトだというだけで、ハードウエアにしろ精神性にしろ、内包するものは上級モデルに何ら遜色ないモデルがおのずと多くなるというわけである。

しかも主体的に選ぶ、あるいは選ばれる存在なだけに、そこにはコンパクトであるがゆえの嬉しさ、愉しさも豊潤に含まれているということも忘れてはならない。

とくに、それが顕著なのがイタリアンコンパクトだと言い切ってしまっても、おそらく異論はないだろう。そして今、そんなイタリアンコンパクトの価値を強くアピールする伝統のブランドが、いよいよ復活する。アバルトが、遂に日本上陸を果たすのだ。

ヨーロッパで一昨年(編集部註:2007年)に復活を遂げたアバルトは、フィアット車をベースにした高性能モデルというハードウエアの基本コンセプトは変わらないものの、従来以上にブランディングに多大な力を費やしているのが特徴的だ。実はサソリのロゴマークはリファインされ、アパレル展開にも積極的。販売拠点も、単にフィアットと併売するというだけでなく、専用のCIなどを用いるかたちで再構築されている。

画像: ステアリングやドアグリップなどの、レザーと赤いステッチのコンビネーションの仕上げと、サソリのバッジが気分を高めてくれるインテリア。左ハンドルのみ。

ステアリングやドアグリップなどの、レザーと赤いステッチのコンビネーションの仕上げと、サソリのバッジが気分を高めてくれるインテリア。左ハンドルのみ。

嬉しいことに、その展開先にはここ日本も含まれていた。今年(編集部註:2009年)、新生アバルトは日本での本格的なビジネスへと乗り出すのである。

その第一弾として投入されるのが、アバルト グランデプントだ。新生アバルトの記念すべきファーストモデルとして、2007年9月にヨーロッパでの発売を開始して以来、好調な販売を続けているアバルト グランデプントだが、瞠目すべきはそのユーザー層である。驚くべきことに、購入者の実に60%が35歳以下だったというのだ。

36歳の筆者にとっては・・・と言っても、日本と本場イタリアでは多少空気は違うかもしれないが、それにしたって彼らのような比較的若いユーザーにとって、アバルトは伝説として知ってはいても、リアルな体験の対象ではないはずである。それが、これほどまでに受け入れられたという事実は、注目に値するはずだ。

今回は、そんなアバルト グランデプントを存分に試す機会に恵まれた。その真価を測るべく、フィアット グランデプントのギガも連れ立って市街地から高速道路、そしてワインディングまで走り回ってきた結果を、ここでは報告したい。

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