改善されたとはいえ、過酷なラリーになりそうだ
アクロポリス・ラリーが初めて開催されたのは1951年、WRCがスタートした1973年からシリーズに組み込まれてきた。そんな伝統のラリーが、2013年以来、8年ぶりにカレンダーに復帰することになった。
かつてのアクロポリス・ラリーは、ゴツゴツした大きな石が転がり、凹凸も多い非常に荒れたグラベル路面が特徴で、気温もかなり高くなることから、「カーブレイカー・ラリー」とまで呼ばれていたが、年々路面は改善され、特に2021年は主催者によって大幅に路面を整備されたことで、比較的良好なコンディションの道での戦いになることが予想されている。ただ、それでも9月のギリシャは日中にとても高い気温となる傾向で、タイヤとエンジンにとって過酷なラリーであることに違いはない。
8年ぶりのWRC開催となるため、このラリーにトップカテゴリーのクルマで出場したことのあるドライバーは多くない。しかし、2011年にトヨタのセバスチャン・オジェが総合優勝、2012年に同じくトヨタのエルフィン・エバンスが二輪駆動車で参戦するなど、トヨタ勢にアドバンテージがあるようにも見える。
なお、2021年WRCシリーズは第8戦が終了した時点で、ドライバー選手権でトヨタのオジェが首位をキープし、同じくトヨタのエバンスが38ポイント差で追いかけるというワンツー体制としている。前戦イープル・ラリー・ベルギーで差を縮められたものの、マニュファクチャラー選手権でもトヨタが2位のヒュンダイに41ポイント差を築いている。
2021年 WRC ドライバーズランキング(第8戦終了時)
1位 S.オジェ(トヨタ)162
2位 E.エバンス(トヨタ)124
2位 T.ヌーヴィル(ヒュンダイ)124
4位 K.ロバンペラ(トヨタ)99
5位 O.タナック(ヒュンダイ)87
6位 勝田貴元(トヨタ)66
2021年 WRC マニュファクチャラーズランキング(第8戦終了時)
1位 トヨタ 348
2位 ヒュンダイ 307
3位 Mスポーツ フォード 135
TOYOTA GAZOO Racing World Rally Teamのヤリ-マティ・ラトバラ代表は「路面はところどころ荒れているかもしれず、タイヤの摩耗も非常に激しいので、よく考えて運転しなくてはなりません。ラミアに近いステージの中には16年間使われていないものもあり、現役のドライバー達にとっては全く新しいステージになります。主催者がかなり力を入れて道路の整備を続けてきたことは知っていますし、路面のコンディションは以前よりも良くなっているようです。とはいえ、多くの滑りやすいグラベルが道の表面を覆っているため、一番手の出走順でステージに臨むのは難しいチャレンジになるでしょう」とコメント。
ドライバー選手権でトップを走るセバスチャン・オジェは 「過去の経験からどんなことが起こり得るかある程度予測できますが、全員が新しいペースノートを作成しなければならないという意味では、新しいイベントであるとも言えます。1番手でステージを走るのは有利ではありませんが、選手権で首位につけているのは素晴らしいことですし、このリードを保つために全力を尽くすのが我々の目標です」と語っている。
ギリシャ中部のラミアをベースに行われる「神々のラリー」
アクロポリス・ラリー・ギリシャは9月9日木曜日の夕方に首都アテネでスタート。古代都市アクロポリスの城塞下でセレモニアルスタートが行われ、その後アテネの中心部であるシンタグマ広場の周辺で短い市街地ステージが行われる。
10日金曜日はアテネを出発して西に移動し、有名なコリントス運河の近くにあるビーチリゾート「ルートラキ」の周辺で2本のステージを走行。そのうちSS2の「アグヒ・テオドリ」のみ午後に再度SS4として走行し、その後北に移動。ラミアのサービスパークに向かう途中でさらに2本のステージ、SS5「テーベ」とSS6「エラティア」が行われる。
11日土曜日は日中のサービスを挟んで6本合計132.56kmのステージを走行。そして最終日12日日曜日は、有名な「タザン」と、今大会最長となる33.2kmの「ピルゴス」を走行。最終ステージとなるタザンの2回目、SS15はトップ5にボーナスの選手権ポイントが与えられる「パワーステージ」に指定されている。
ステージは全部で15本、合計292.19km。リエゾン(移動区間)も含めた総走行距離は1285.85kmという4日間に渡る戦いは、相当タフなものになりそうだ。