レクサスとは異なるユニークなハイブリッドシステム
レポーターが乗ったML450ハイブリッドは、メルセデス・ベンツが現在アメリカで量産に向けてテストを行っているプロトタイプである。リアのバッジの他に、量産のガソリンあるいはディーゼル仕様のMLクラスとの違いはフロントのボンネットで、V6エンジンの上に積み上げられた電気補機類のために大きく盛り上がっている。
ここに搭載されているエンジンは3.5L V6アトキンソンサイクルエンジンで、最高出力は279ps、最大トルクは350Nmを発生する。一方、これを補佐する電気モーターは1基目が84psと235Nm、2基目が82psと260Nmを発生する。
また搭載バッテリーは288ボルトの電圧を持った高圧ニッケル水素電池で、重量は83kg、リアに搭載されて水で冷やされる。電池メーカーはアメリカのコバーシス、制御系は日立オートモーティブが受け持っている。システム全体の総合最高出力は340ps、最大トルクは517Nmと発表されている。
ツーモードハイブリッドとは、2基の電気モーターと3個のプラネタリーギア、そして4枚のクラッチを持ったトランスミッションユニットが中心になったシステムで、高い効率と性能を両立させるとメルセデス・ベンツは確信している。
スタートはほとんどのフルハイブリッドシステムがそうであるように、まず電気モーターが受け持つために静かで、そしてトルクフルに加速して行く。システム合計で150kgのエクストラウエイトを背負っていることを感じさせない。
しかも電気モーターから内燃エンジンでの駆動に変わる瞬間も、よほど気をつけていないとわからないほどである。同じようにエネルギーを回生しているブレーキもまったくスムーズで違和感がない。また当然のことながらアイドリングストップも、そこからのスタートもまったく自然であった。
そして何よりも驚くのは、まるでV8を搭載しているかのような動力性能が得られていることである。いやそれ以上に電気モーターによる特別な、乗ったことはないが、まるでF1のKERSを思わせるような異質な加速感も体験することができた。もちろんまだニューヨーク市内のチョイ乗りであったが、その実力はかなりのレベルに達していたことがわかった。
ダイムラーの開発センターでは、レクサスのハイブリッドを徹底的に研究しており、同行してくれたアレキサンダー・ドルプ氏も「彼らができなかったところへ向かって開発を進めてきた」と語っていた。
決して単純に他人の真似をしない。むしろ先達にない性能を追求してきたという姿勢が、メルセデス・ベンツML450ハイブリッドをユニークな製品に仕上げている。メルセデスのリリースではスタートから60マイル時までの加速は7.8秒、最高速は210km/h、そして肝心の燃費は市街地で8.9km/L、高速道路で10.2km/L、そして平均で9.4km/Lと発表されている。
こうした数値は短時間の公道上ではもちろんテストできなかったが、それでもメルセデス・ベンツ、いやドイツ自動車技術の底力が表れてきたことが、ひしひしと感じられた。(文:木村好宏)
メルセデス・ベンツ ML450ハイブリッド プロトタイプ 主要諸元
●エンジン:V6 DOHC
●排気量:3498cc
●最高出力:205kW(279ps)/6000rpm
●最大トルク:350Nm/3000-5500rpm
●モーター1最高出力:62kW(84ps)
●モーター1最大トルク:235Nm
●モーター2最高出力:60kW(82ps)
●モーター2最大トルク:260Nm
●システム総合最高出力:250kW(340ps)
●システム総合最大トルク:517Nm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●EU総合燃費:9.4km/L
●最高速度:210km/h
●0→60mph加速:7.8秒
※EU準拠