「Z」というアイコンに込めた新意匠の内外装と最新デバイス
新型Zのデザインテーマは「伝統と最新技術の融合」。懐かしさの中に最新の技術を採り入れたものとなっている。エクステリアはZ伝統のロングノーズや低重心のリアスタンスなど、歴代Zへのオマージュを込めたシルエットに仕上がっている。
そのポイントとなるのが、LEDヘッドライトのデザイン。S30の240Z・Gを彷彿とさせる2つの半円がイメージされており、単に丸目とするより、240ZGのヘッドランプカバーの反射光を模した意匠となっている。また、リアコンビネーションランプは、Z32を思わせるデザインに最先端の3DシグネチャーLEDテールランプを採用し、Zらしさを表現している。
インテリアも理想的なスポーツカーのコックピットとするため、メーター表示や操作系のインターフェイスなど、日産ドライバーである松田次生選手のアドバイスを元にまとめられた。他にもステアリング形状やZ伝統の3連メーターなど、オーセンティックでスポーツカーらしくも機能的なテイストでまとめられている。
ダイナミクス性能でも、応答性の高いハンドリングを実現するためボディ剛性を向上。ラックアシストタイプの電動パワーステアリングやワイドフロントタイヤなどを採用し、コーナリング性能を最大13%向上させたという。足回りも、前後のダンパーに新設計の大径モノチューブダンパーを採用し、減衰力を現行より約20%低減させることで路面追従性の向上と、高い操縦安定性を実現している。また、アルミ製ダブルウィッシュボーン式フロントサスペンションは、キャスター角を増やすなどしてジオメトリーを変更し、直進安定性を向上させている。
型式はZ34のままだが? の問いに全米Zカークラブのボスが語った!
一方で意外な事実もある。実はこの新型Zの型式、現行型と同じ「Z34」のままなのだ。プラットフォームはFR-Lを引き継ぐが、大改良を加えられているし、エンジンも新規なのだが・・・。
理由は認証取得に際してのコストの問題だろう。何しろ、新規プラットフォームの開発やそれに伴う認証には数多くの実験や工数、時間を要する。それが故に、日産は今回のZを「フルモデルチェンジ」とは謳ってはいない。
ただし、グプタCOOは発表の舞台で明確にこのZを「7代目」と言っている。この点について、全米Zカークラブのボス、クリス氏に発表直後に訊いてみた。
「完全に新しいシャシーを作るのは難しく、非常に高価です。Q60/370Zと共通のフロントミッドシップのパッケージは非常に優れたもので、新型Zのために大幅に改良されています。私は日産がZ34シャシーに『シリーズ2』の呼称を与えるべきだと思います。開発陣が『Z34』という呼称を共有していても、プラットフォームを進化させています」
そして、さらにこう続けた。
「4万ドルというスタート価格は適正なものであり、市場に出回っている他のクルマの中ではお買い得だと思います。コルベットやスープラ、ポルシェよりも安い。『Zを一般のお客様にも手に取っていただけるようにしたい』というミスターK(片山 豊氏)の意図に沿ったものです。私は今、NISSAN Zを購入することにとても興奮しています」と語った。
思えば現行型Z34は2008年12月の登場から13年もの永き時間を走り続けてきた。その間、多くの社会的変動やスポーツカーを取り巻く環境の変化があった。その中で、日産の開発陣が新たなZを生み出そうと努力したことは想像に難くない。その意味で、このZを安易に「単なるビッグ・マイナーチェンジ版」と呼ぶことはできない・・・と筆者は思うのだ。
そして何より、日産が「フェアレディZ」の名前を残そうとしていることも忘れてはならない。海外では「NISSAN Z」として展開されるが、日本名は「フェアレディZ」。その発表は「2021年冬」としかアナウンスされていないが、今はその発表を一人のZファンとして楽しみに待とう・・・そう思うのだ。つづく(文:FAN BOOK編集部 森田浩一郎)