共通のプラットフォームを使って、ピュアなガソリンモデルとピュアなEVを同時に開発。ほぼ横並びのデザイン性、実用性、安全性を持つ2台を「選ぶポイント」はどこにあるのか。(Motor Magazine 2021年10月号より)

スムーズなダッシュ力。その一方で落ち着き感も

乗り比べるとドライブフィールが異なることは言うまでもない。e-208もけっして性能を誇示するタイプのEVではないとはいえ、やはりモーターの力強くリニアなレスポンスは、とうていICEで得られるものではない。アクセルペダルを軽く踏み増すとスーッとなめらかに加速する。瞬発力を強調するのではなく、自然に車速が高まっていく感覚には、ICEっぽい伸びやかさを意図して調律したフシも見受けられる。

加速感は軽やかでも車両重量はそれなりにある。そのため操縦性は、外見からイメージするよりもどっしりと落ち着いた感覚がある。キビキビと身軽さが際立つ208とは趣を異にする部分だ。その208は、わずか1.2Lながらブーストが本格的にかかる2000rpm台の後半から5000rpmあたりにかけての中速域は、かなり力強い。このクラスのクルマではDCTの採用も多いが、208は8速のトルコンATを組み合わせている。多段化の強みとトルク増幅効果もあって低回転域も扱いやすい。

音や振動も3気筒としては抑えられている方だが、高回転域でのサウンドに3気筒らしさがやや残る。しかしそれなりに対策が施されているので、e-208との静粛性全般の差はそれほど大きくはない。ICEとBEVのの最大の違いは、アクセルペダルを踏んだ直後の反応にある。

リニアに応答するe-208に対し、208は加速体勢に入るまでにわずかにひと呼吸おいてからとなる。あるいはいったんアクセルオフにして再加速するような状況でも、208がしゃくるような挙動を伴うことがあるのに対し、e-208はほぼ姿勢を乱すことがない。そのあたりは走りの上質感を左右する。

また、208のスポーツモードはワインディングロードを積極的に走るには楽しいが、過敏すぎて街中で乗るにはあまり適さない。対照的に、e-208のスポーツモードではもともと良好なレスポンスがさらに良くなるが、リニアなので、街乗りでも意のままに操ることができる。

画像: 208のパワートレーン。B/Cセグメント用に開発された新世代プラットフォームは、あらゆる動力源に対応。従来のPF1に対して30kgの軽量化を達成。

208のパワートレーン。B/Cセグメント用に開発された新世代プラットフォームは、あらゆる動力源に対応。従来のPF1に対して30kgの軽量化を達成。

ついでに述べるとe-208はエコモードでもけっこう速い。Bレンジにすると、いわゆるワンペダルドライブに近い感覚になる。フットブレーキのフィーリングはそれほど悪くないが、やはり208の方が自然ではある。

音や振動については、EVが有利な印象がある。しかし実際は、BEVはモーターやギア、風切り音やタイヤの発する音がかえって目立つもの。ゆえに自動車メーカーは、むしろICEよりも入念に対策を施している場合が多い。

e-208も床下に搭載したバッテリーに遮音材としての機能を持たせたり、アコースティックガラスを採用するなどしているが、それでもタイヤがらみの音は目立つ。良路はまだしも不整路になると、それなりに気になる。

その点で208の方が、タイヤなどからのノイズが気にならない。とくに高速巡航時がそうだ。ただし、こうした一連の音に関する感覚は、我々がICEに慣れすぎているという事情もあるのだと思う。

ところで、208はスポーツモードに人工的なサウンドを付与している。近年の他モデルを見ても、プジョーはこうした演出に積極的な面がある。逆に他社のBEVでは音による演出も見受けられるが、e-208にはないあたり、何か理由があるのだろう。

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