2009年、トヨタブランドの最上級セダンとしてクラウンマジェスタがフルモデルチェンジ、「マジェスタ」として5代目へと進化した。クラウンよりひとまわり大きい専用ボディにセルシオと共通のV8エンジンを搭載、そこに日本の高級車としての「格」が盛り込まれた。それはセルシオとはどう違っていたのか、「クラウンよりも上」はどう表現されていたのか。ここでは発表間もなく行われた試乗レポートの模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2009年6月号より)

どんな場面でもクルマを安全にスムーズに走らせることができる

かつてはクラウンがトヨタブランドのフラッグシップだった。その後、上にセルシオがラインアップされたが、そのセルシオはLSと名称変更されレクサスブランドへ。クラウンファミリーのなかでトップモデルだったクラウンマジェスタが、押し上げられるようにトヨタブランドの長男となった。

ただ、先代のクラウンマジェスタは「意図せず長男になった」というイメージが強かったが、新型はもともとそうしたポジショニングになる意図で開発されたので、生まれながらにしてトヨタブランドのトップに相応しい高級車としての「格」を備えている。

まず、そのスタイル。先代モデルのテールランプまわりのデザインが個性的でとても好きだったのだが、新型はそのイメージを大きく変えてきた。万人受けしそうでトヨタ車らしいといえばそうだが、フラッグシップとしての押し出し感は薄いように感じられる。

チーフエンジニアの下村氏によると、「先代は好き嫌いが分かれていたため、新型は多くの人に好かれるデザインにした」という。たしかに縦にバーが入れられ大きくなったグリルは押し出し感が十分にあり、迫力のあるものに変わっている。

新型は、先代比でホイールベースが75mm延長された。といってもいたずらに全長が伸ばされたわけではなく4995mmに留められている。

前出のチーフエンジニアの下村氏は「新型クラウンマジェスタを一番快適なクルマにしたかった」という。快適なクルマというのはなにも室内の広さや豪華さだけではない。乗り心地もそうだ。たかが75mm、されど75mm。この+75mmの違いで乗り心地は大きく変わってくる。満足のできる乗り心地の境地に到達するには絶対にこの75mmが必要だったのだ。

画像: シート表皮はプレミアム本革。室内の広さや豪華さはもちろん、乗り心地もいい。走りはトヨタブランドのフラッグシップに相応しい完成度で、どんな場面でも誰もがスムーズにクルマを安全に走らせることができる。

シート表皮はプレミアム本革。室内の広さや豪華さはもちろん、乗り心地もいい。走りはトヨタブランドのフラッグシップに相応しい完成度で、どんな場面でも誰もがスムーズにクルマを安全に走らせることができる。

快適なクルマという点では、ラゲッジスペースも先代モデルと同等の523L(リアオートエアコン装着車は426L)を確保しているが、開口部幅を左右に広げ内部の凹凸を抑えることで使い勝手を向上させゴルフバッグなどの出し入れを容易にしたのもポイントになっている。

搭載エンジンは2機種。FRには4.6Lの1URFSE型V8DOHC、4WDには4.3Lの3UZ-FE型V8DOHCだ。トランスミッションは、FRが8速AT、4WDには6速ATが組み合わされる。

試乗車として用意されていたのは、4座仕様のGタイプFパッケージとGタイプ、AタイプLパッケージの3タイプ。装着タイヤは、GタイプFパッケージがYOKOHAMA dB decibel E75、GタイプとAタイプLパッケージがBS TURANZA ER33。サイズは3タイプとも前後235/50R17。235サイズのタイヤはV8の巨大なトルクを支えるために必要であり、ロードノイズを極力抑えるため銘柄選定にもこだわったという。

また、アルミホイールも剛性を上げロードノイズを抑えることを実現させた。そうしたことが功を奏し、室内はとても静かだ。新しいクラウンマジェスタは、異音や雑音が聞こえることによるストレスとは無縁だろう。

そして、走りはトヨタブランドのフラッグシップに相応しいものだった。グレードによる走りの違いに大きなものはなく、高速コーナーもフラットな姿勢のままクリアしていく。タイトなカーブが続く場面でもハンドルを切ればその通りにクルマがトレースしてくれるのだ。アクセルのオンオフやブレーキのオンオフで車体の向きを変えるような感覚とは違い、まるで敷かれているレールの上を走っているようだ。

新型クラウンマジェスタのクルマとしての完成度はとても高く、運転しているというよりはクルマが勝手に気持ちよく走ってくれているという印象を強く持った。クラウンマジェスタをうまく運転するにはドライバーの腕はあまり関係ないのかもしれない。誰もがスムーズにどんな場面でもクルマを安全に走らせることができる、それが新型クラウンマジェスタの意図された快適性のひとつなのだろう。(文:Motor Magazine編集部 千葉知充/写真:村西一海)

画像: ステアリングホイールとシフトノブには天然木を削り出した素材を採用。センタークラスターはスイッチの数を少なくしてシンプルかつ大型されている。

ステアリングホイールとシフトノブには天然木を削り出した素材を採用。センタークラスターはスイッチの数を少なくしてシンプルかつ大型されている。

トヨタ クラウン マジェスタ Gタイプ Fパッケージ 主要諸元

●全長×全幅×全高:4995×1810×1475mm
●ホイールベース:2925mm
●車両重量:1820kg
●エンジン:V8DOHC
●排気量:4608cc
●最高出力:255kW(374ps)/6400rpm
●最大トルク:460Nm/4100rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:FR
●10・15モード燃費:9.1km/L
●タイヤサイズ:235/50R17
●車両価格:790万円(2009年当時)

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