ショックアブソーバーはスプリングに抵抗を与えるパーツだ
サスペンションはスプリングによって乗り心地や操縦安定性を確保している。ただ、スプリングは固有振動数を持っているので振動をすぐに収められない。タイヤを通じた入力がスプリングにあると、縮んだ後に伸びて、また縮んで伸びてという伸縮運動を繰り返す。これが収まり切らないうちに再び入力があったりすると、増幅作用でより大きな伸縮運動になって非常に危険である。
それを制御するのがショックアブソーバーだ。これは伸縮運動するスプリングに適度な抵抗を与えることによって、その動きを抑える役割を担っている。そのときの抵抗力を減衰力と呼ぶ。スプリングが縮むとき(縮み側)と伸びるとき(伸び側)の両方に減衰力を発生させられる。つまりスプリングを縮みにくく、伸びにくくしていると言い換えても良いだろう。
この減衰力をスプリングの硬さにあった適正なものに設定することで、スプリングの伸縮運動をコントロールし、安定した走行ができるようになるわけだ。
例えば、コーナリング時にアウト側タイヤに入力があるとスプリングが縮む。このとき、ショックアブソーバーがなければ一瞬でスプリングが縮んでしまい、ロールスピードも速くなり、荷重が一気にかかることでタイヤグリップを失いかねない。このとき縮み側の減衰力がロールスピードを制御することでそれを防ぐ。
続いて、そこから直進状態に戻るときや、逆方向にコーナリングする場合、スプリングだけだと一気に伸びてしまい、それも挙動を不安定にする。これもショックアブソーバーの伸び側の減衰力が働くことで操縦安定性を保つ。
「スプリングの動きを抑えて安定性を保つ」という意味で、伸び側の減衰力は重要で、縮み側に比べて強いのが常だ。これはローリングだけでなく、前後にクルマが動くピッチングでも同じ考え方になる。
ショックアブソーバーの基本構造にも簡単に触れておく。外側から見ると筒状の本体から可動するピストンロッドが出ている形になる。本体にはオイルが封入されており、ロッドとつながったピストンがその中にある。ピストンにはオリフィスと呼ばれる穴を開けられており、ピストンが上下動するとオリフィス内をオイルが行き来する。そのときの通過する抵抗が減衰力となるわけだ。あくまでこれは単純化した説明であり、実際にはもっと複雑だ。(文:Webモーターマガジン編集部 飯嶋洋治)