タナックとの一騎討ちを制してエバンスがトヨタの牙城を守る
WRCのクラシックイベントのひとつラリー・フィンランドは、2020年のイベントがコロナ禍によって中止になったため、2021年が2年ぶりの開催。過去3回(2017、2018、2019年)はフィンランドをチームのベースとするトヨタ・ヤリスWRCが3連勝を果たしているが、2018年と2019年の勝者は現在はヒュンダイに所属するタナックであり、今年は「トヨタの4連勝」か「タナックの3連勝」かに注目が集まった。
10月1日のラリー初日、序盤をリードしたのはヒュンダイ。ドライバーズ選手権ランキングが下位のため出走順が有利だったブリーンとタナックが好タイムを連発して1-2体制を築く。
一方のトヨタ勢は、地元出身で出走順もまずまず、さらにここ3戦で2勝と絶好調だったカッレ・ロバンペラが最有力と見られていたが、出だしからクルマのフィーリングに不満を訴えペースが上がらない。さらには選手権リーダーのセバスチャン・オジェも先頭スタートに苦しみ、下位に低迷する苦しい展開となった。
ここでトヨタの救世主となったのが、2番手スタートながら初期セッティングが決まって滑りやすい状況でもタイムロスを最小限に留めていたエバンスだった。
初日最後のナイトステージでヒュンダイ勢を圧倒するベストタイムを記録してブリーンとタナックに急接近すると、土曜日朝の4連続ベストタイムで一気にふたりを抜いて首位へ。
その後は猛追するタナックにタイム差を詰められたが、続くステージでベストタイムをマークして突き放す盤石の展開で今季2勝目のフィニッシュに飛び込んだ。
ヒュンダイ勢はタナックが2位、ブリーンが3位でラリーを終えたものの、ドライバーズ選手権ランキング3位につけていたティエリー・ヌーヴィルが土曜日にラジエーターを痛めてリタイア。
これで残り2戦を残してドライバーズタイトル獲得の可能性があるのは、今回は5位に終わったオジェと優勝+パワーステージ1位のフルポイントを獲得したエバンスだけとなり、トヨタ勢の「3年連続ドライバーズ選手権獲得」が確定した。
なお、プライベーターとしてヤリスWRCをドライブしたエサペッカ・ラッピは総合4位でフィニッシュ。TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムによりヤリスWRCで出場の勝田貴元はデイ2で一度リタイアするも再出走し、総合37位で完走した。
次戦WRC第11戦ラリー・カタルーニャは約1週間のインターバルを経て、10月14〜17日にスペイン南西部のサロウを起点に開催される。2年ぶりの開催となるラリー・スペインは、近年グラベルとターマック(舗装路)の両路面を走行する「ミックス・サーフェス・ラリー」として行われてきたが、今年は完全なターマックラリーとなる。
2021年 WRC第10戦ラリー・フィンランド 結果
1位 E.エバンス(トヨタ ヤリス WRC)2h19m13.7s
2位 O.タナック(ヒュンダイ i20クーペ WRC)+14.1s
3位 C.ブリーン(ヒュンダイ i20クーペ WRC)+42.2s
4位 E.ラッピ(トヨタ ヤリス WRC)+58.8s
5位 S.オジェ(トヨタ ヤリス WRC)+2m54.4s
6位 G.グリーンスミス(フォード フィエスタ WRC)+5m02.3s
7位 A.フルモー(フォード フィエスタ WRC)+6m22.9s
8位 T.スニネン(フォルクスワーゲン ポロGTI R5)+9m52.1s
9位 M.オストべルグ(シトロエン C3 Rally2)+10m07.8s
10位 E.リンドフォルム(シュコダ ファビア ラリー5 Evo)+10m52.8s
2021年 WRC ドライバーズランキング(第10戦終了時)
1位 S.オジェ(トヨタ) 190
2位 E.エバンス(トヨタ) 166
3位 T.ヌーヴィル(ヒュンダイ)130
4位 K.ロバンペラ(トヨタ) 129
5位 O.タナック(ヒュンダイ)128
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7位 勝田貴元(トヨタ)68
2021年 WRC マニュファクチャラーズランキング(第10戦終了時)
1位 トヨタ 441
2位 ヒュンダイ 380
3位 Mスポーツ フォード 172