環境に優しいと言われる再生可能燃料が、国際格式の耐久レースで正式に採用されることが決まった。内燃機関にも明るい未来が垣間見える。(Motor Magazine2021年11月号より)

環境に優しくオクタン価が高いバイオマス燃料

画像: トタルエナジーズは、潤滑油や燃料の分野でも、高度に環境に配慮した製品の研究開発に日夜取り組んでいる。

トタルエナジーズは、潤滑油や燃料の分野でも、高度に環境に配慮した製品の研究開発に日夜取り組んでいる。

自動車産業の革新は、やはりモータースポーツ抜きには語れない。

トヨタ、アストンマーティン、フェラーリ、ポルシェそしてプジョーも復帰する国際格式の耐久レースWEC(FIA World Endurance Championship)で、2022年から100%再生可能燃料が導入されることが決まった。もちろんル マン24時間レースの記念すべき第90回大会も、この燃料が使用されることになる。

「エクセリゥム レーシング100」と名付けられたバイオエタノール燃料の開発、生産を担うのはフランスの大手エネルギー企業、トタルエナジーズだ。同社は「2050年までに実質的なCO2排出量ゼロ」を目標に掲げ、内燃機関や電気モーターのエネルギー効率を高めるための高度な潤滑油の開発などにも積極的に取り組んでいる。再生可能燃料をモータースポーツで使うことも、その戦略の一環だ。

内燃機関を搭載した名車たちが、元気に走り続けることができる時代が来るかも

画像: アストンマーティンレーシングチームにも、トタルエナジーズはテクニカルパートナーとして潤滑油を提供。

アストンマーティンレーシングチームにも、トタルエナジーズはテクニカルパートナーとして潤滑油を提供。

ところでバイオエタノールと言うと、これまでは糖やでんぷんなどを原料として利用するケースが多く、人や家畜が口にする食料資源との競合が問題視されてきた。だが今回、WECで使用されるバイオマス由来の原料は、フランスの代表的産業であるワイン造りの過程で発生するぶどうの搾りかすや樽にたまった沈殿物質・・・基本的に廃棄される素材を利用している。これにトタルエナジーズのファイザン製油所で化学的に(もちろんカーボン循環型製法により)合成されたETBE(エタノールとイソブテンとの反応によって合成される物質)を混合する。

アルコールが入っているとはいえ「ワインで本当にレーシングマシンが走るの?」と心配に思われるかもしれないけれど、実はこのETBEは、ガソリンの性能評価で重要なオクタン価が非常に高いことも特徴だ。実際にレース車両で使用される「エクセリゥム レーシング100」は、従来の燃料と比べてCO2排出量を65%以上削減できる一方で、モータースポーツで必要とされるすべての要件を備えているという。もちろん、最新のFIA基準を満たしていることは言うまでもない。

バイオマス由来の燃料が長く過酷な耐久レースの舞台で使用されることで、さまざまなデータが蓄積されていく。実用化に向けての問題点も、浮き彫りになることだろう。そして、もたらされる多くのフィードバックは、自動車文化の未来を変えることになるかもしれない。

たとえば再生可能燃料が現実的な価格で市販されるようになれば、絶滅危惧種と言われている内燃機関エンジンたちが環境負荷に気兼ねすることなく、元気に街を走り続けることができるかもしれないのだ。環境に配慮した次世代のクルマたちだけではなく、これまで私たちが愛してやまなかった旧世代の名車たちにも、新たな可能性が開けようとしている。(文:Motor Magazine編集部 神原 久/写真:トタルエナジーズ、DPPI)

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