シリーズ中もっともプジョーらしい「猫足」を持つ
新緑まぶしい軽井沢での試乗会。このままカブリオレ状態で走り出す。
フロントガラスの傾斜角がきつく、Aピラーの付け根がかなり遠くにあるので、カブリオレモデル特有のピラーの太さはまったく気にならない。他の308シリーズ同様、ドアミラーの先にある三角ガラスも、死角を少なくするのに一役買っている。
特筆すべきは、風の巻き込みの少なさだ。標準で着脱式のウインドディフレクターも用意するが、それを装着せず高速道路を走行しても、風はさわさわと髪の先を撫でる程度。シチュエーションを選ばず、髪の乱れを気にすることなくどこでもオープンエアを楽めるのは、とくに女性ドライバーにとって歓迎すべき長所だろう。
フロントガラスがドライバーの頭上近くまで伸びているため巻き込みが少なく、高速走行時にもパッセンジャーと普通の声音量で会話できるのだが、反面、通常の運転姿勢だと、その視界のなかに青空はなく、意識的に視線を上に移さないと、流れる景色を感じることはできない。
搭載されるトランスミッションは例の4速ATとなるが、シフトショックなどは今や皆無。ワインディングでは、あと何速か欲しい衝動にかられるが、街乗りや高速巡航など日常シーンにおいては不満は少ない。
308GTiと同レベルに強化されたという足まわりは、決して硬すぎることはない。高い回頭性でタイトコーナーも難なくクリア。ぺっとりと路面を掴んで粘るその感覚は、308シエロなど通常モデルよりもむしろコンフォート性において上回っている。プジョーらしい猫足という意味では、308シリーズの中ではこのCCが一番かもしれない。
メタルトップを閉めクーペ状態にすると、ほとんどハッチバックモデルと変わらない静粛性を確保している。フロントガラスにラミネート吸音ガラスを採用するなど、CC独自の防音処理を施し、気密性も高い。
クーペのスポーツ性とカブリオレの開放感、そしてプジョーらしい走り味。308CCは、何も我慢することなく、理屈抜きで楽しめる1台に仕上がっている。(文:Motor Magazine編集部/写真:原田 淳)
プジョー 308CC グリフ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4455×1820×1430mm
●ホイールベース:2610mm
●車両重量:1590kg
●エンジン:直4 DOHCターボ
●排気量:1598cc
●最高出力:103kW(140ps)/5800rpm
●最大トルク:240Nm/1400-3500rpm
●トランスミッション:4速AT
●駆動方式:FF
●10・15モード燃費:9.4km/L
●タイヤサイズ:225/45R17
●車両価格:445万円(2009年当時)