フルモデルチェンジを機にディーゼルモデルが復活
実はクラウンやスカイラインをしのぐ長い歴史を持っており、ちょうど70周年を迎えたタイミングで300系に生まれ変わったランドクルーザー。フルモデルチェンジとしては14年ぶりとなる。
インパクト満点の顔ゆえ新旧を判別するのは容易だが、外寸はほぼ同等で、基本フォルムも概ね踏襲しており、30年あまり前の80系で最適値として導き出した2850mmのホイールベースは300系にも受け継がれた。ただし、内容的にはTNGAに基づき全面刷新されている。また、エンジンはガソリン自然吸気V8が廃止されV6ツインターボとなったほか、ディーゼルの復活もポイントだ。
走ってみた第一印象としては、かなり軽くなった。むろんあくまでランドクルーザーとしては、というただし書きは付くものの、車両重量が200kgも軽くなったからというだけでなく、操縦感覚そのものが身軽になっていて、意のままに操れる気分が増している。軽くなったとはいえ、これほど大柄で2.5トン超級の車体が、思いのほか手の内で操れることには驚いた。
聞けば、いろいろ手をつくしたようだ。フレームだけでなくボディも大きく進化。大幅な軽量化とともに、ねじり剛性が約2割も増している。エンジンやATもできるだけ低く後方に搭載することで低重心化と前後重量配分の最適化が図られた。さらには油圧パワーステアリングの進化に加えて、操舵支援のために採用したアクチュエーターも手伝って、よりスッキリとしたフィーリングになっており、操舵に対する応答遅れも小さい。これにも前述の諸々が効いている。
ディーゼルモデルは大トルクで市街地でも力強く走れる
ZXの走りにも感心したが、新顔のGRスポーツがさらに洗練されていて驚いた。18インチタイヤを履き、サスペンションは専用チューニング、唯一となるE-KDSSの搭載が走りに関して差別化された部分となるが、マッチングは絶妙で、応答遅れもない。ロールもほどよく抑えられており、ヨーの収束のさせ方も巧く挙動が乱れにくい。ドライバーズカーとしても遜色ないように思えたほどだ。
20インチを履くZXでやや感じられた突き上げと微振動もほとんど気にならない。フットワーク全般において、GRスポーツの洗練ぶりが際立っていた。
ガソリンエンジンはレクサスLSと同じものをベースにランドクルーザーに相応しい特性を与えたもので、性能的には十分すぎるほど。最高出力が400ps超というだけあって、吹け上がりも伸びやかだ。一方で、オフローダーとして重要な低速域の扱いやすさも確保されている。
ただし、音についてはやはりV6ではV8の質感にはかなわないことを鑑みて、300系ではエンジン音をできるだけ聞こえないようにしたという。一方のディーゼルも、車外はにぎやかではあるが、車内では一変して音や振動がかなり抑えられている。
ディーゼルモデルの最大トルク値はガソリンモデルより50Nm大きく、太いトルクが低回転域から立ち上がるので、ゼロ発進や市街地での走行でも、より力強さを実感する。発売直後の販売比率は、これまでのイメージもあってガソリンが圧倒的なようだが、この良さが知られると、ゆくゆくはディーゼルがかなり伸びそうな気もする。
もうひとつ感心したのが、ブレーキング時の姿勢の良さだ。こうした背の高いSUVとは思えないほど、前につんのめる感覚が小さく、不快な思いをしなくてすむのもありがたい。
ランドクルーザーのフルモデルチェンジとしては、これ以上はなかったのではないかと思う。欲をいうと、操舵支援の制御にやや遅れなどを見受けられ改善の余地を感じたのだが、操舵支援の導入の困難な油圧パワステで実現できているだけでもありがたいと思うようにしたい。やはり今の時代、操舵支援があるとないとでは大違いだ。
今回は舗装路のみでの試乗となったが、ランドクルーザーといえば本領を発揮するのはいうまでもなくオフロード。一連の舗装路で感じた進化よりも、実はもっと大きな進化を果たしたと開発陣が胸を張る悪路走破性ついても、試せる機会を楽しみにしたい。(文:岡本幸一郎/写真:永元秀和)
トヨタ ランドクルーザーZX 主要諸元
●全長×全幅×全高:4985×1980×1925mm
●ホイールベース:2850mm
●車両重量:2550kg
●エンジン:V6 DOHCディーゼルツインターボ
●総排気量:3345cc
●最高出力:227kW(309ps)/4000rpm
●最大トルク:700Nm/1600-2600rpm
●トランスミッション:10速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:軽油・80L
●WLTCモード燃費:9.7km/L
●タイヤサイズ:265/55R20
●車両価格(税込):760万円