トーションバースプリングは棒状のままねじれを利用する
コイルスプリングの場合、バネ鋼をらせん状にねじって作るところを、トーションバースプリングは、その過程なしにバネ鋼のねじり自体でタイヤからサスペンションに入る力を吸収する。見た目は本当にただの「棒」となる。もちろんショックアブソーバーでバネの動きを減衰するのは他のサスペンションと同じとなる。
取り付けは、トーションバーの一端をシャシ側に固定し、もう一端をサスペンションアームにつなげる。これで路面からの入力を受けるとトーションバーがねじれて、その後にもとへと戻ろうという力を発生するので、バネとしての役割をするわけだ。
この形式のスプリングは、トーションバーの直径が細いほど、また長いほど柔らかいスプリングレートとなる。硬くするにはその逆となる。長いスペースを必要とする場合、トーションバーを二重構造として短いスペースで必要なバネレートに設定することも可能だ。
現在はあまり見られないものの、1970年代までは先進的なスプリングとして使われていた。コイルスプリングにくらべて高さを抑えられるメリットがあり、スプリング高を低くくできることから低床化が可能になる。そのため小型スポーツカーからワンボックスカーまでスペースを有効に使いたいクルマに向いたスプリング形式だった。
また、オフロード4WD車のフロントサスペンションとして、ダブルウイッシュボーン式サスペンションに組み合わされた例もある。この場合、コイルスプリングを採用した場合ドライブシャフトと緩衝しやすいが、トーションバースプリングならリーフスプリングと同様それを避けられるからだ。
もちろんメリットばかりではない。トーションバーのねじれ角が大きくなると急にスプリングレートが高まり、乗り心地に影響を与えてしまうというデメリットがある。具体的には線形特性を持ったスプリングとして使えるのは、プラス・マイナス20度程度までとなる。
トーションバースプリングを採用したクルマとして有名なのは、1980年代までのポルシェ911(901型)シリーズがある。これはフロントのストラット式、リアのトレーリングアーム式に組み合わせていた。国産車で有名なところではスバル360、ホンダの3代目シビック、初代バラードCR-Xなどが代表的なものだ。(文:Webモーターマガジン編集部 飯嶋洋治)