2009年、2代目ジャガーXKシリーズが世代初の大幅改良を受けて登場した。注目は12年ぶりに新設計されたV型8気筒エンジン。直噴化されたパワーユニットはどんな走りををもたらしたのか。ここでは日本上陸直後に行われた国内試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2009年7月号より)

現行モデルの、初めての大幅変更

1948年に発表されたXK120は、その驚くべき性能と美しいスタイリングで、後に登場するEタイプとともに、ジャガーの名声を一気に高めた。ル・マン24時間耐久レースで華々しい勝利を重ね世界から注目を集めていたジャガーは、市販車の世界でも大成功。「どうやったらこんな高性能をこの価格で実現できるのか」と人々を驚かせたものだった。

新型XKシリーズは、その名車XK120の流れを汲むジャガー伝統のスポーツカー。新型といってもフルモデルチェンジではなく、2006年5月に日本で発表された現行モデルの、初めての大幅変更となるものだ。

ポイントは新開発の5L AJ-V8型ダイレクトインジェクションの採用と、XFで好評のジャガードライブセレクターの導入。

ジャガー自慢のAJ-V8型エンジンの最大の効率を追い求め、ダイレクトインジェクション化と5Lへの排気量拡大を敢行。排気量は従来のボア×ストローク=86.0×90.3mmの4196ccから92.5×93.0mmの4999ccに拡大している。その結果、NAで385psと515Nmを発生、0→100km/h加速は5.5秒という加速性能を実現しながら、10・15モード燃費7.0km/Lをマークする。

スーパーチャージャーを装着したXKRではさらに効率を高め、そのスペックは510ps/625Nm、0→100km/h加速は4.8秒、10・15モード燃費6.6km/Lに至っている。

従来の4.2L V8と比較して、パワー/トルクを20%ほど向上させながら、わずかではあるが燃費性能をアップさせているというから驚きだ。歴代ジャガーの中でも最高のパフォーマンスを発揮しつつ、環境性能でも世界を驚かせることになった。

ジャガードライブセレクター、6HP28型6速電子制御ATの採用も、XKファンが注目するところだろう。センターコンソール上のスタートボタンを軽く押してエンジンを始動、すると円筒形のセレクターレバーが上昇する。ギアポジションの選択はこのセレクターを回すだけ。もちろんそういった演出だけでなく、電子制御により的確で素早い変速が可能なのも魅力だ。

アダプティブダンパーの採用も大きなポイント。毎秒100回にわたって、ロール、ピッチ、上下動などをセンシングして制御するもので、これにより、ダイナミックな走りと快適な乗り心地の両立も実現している。さらにXKRに標準でアダプティブディファレンシャルコントロールを装備。これはトラクションコントロール、DSCシステム、ABSなどを統合制御して後輪のスリップをコントロールするもので、いわゆる電子制御トルクベクトリングシステム。後輪左右のトルク配分を制御して、よりスムーズなコーナリングを実現する仕掛けだ。

画像: 最新のテクノロジーとジャガー伝統のクラフトマンシップがうかがえる、XK Portfolioコンバーチブルのインテリア。

最新のテクノロジーとジャガー伝統のクラフトマンシップがうかがえる、XK Portfolioコンバーチブルのインテリア。

ジャガーだけが知るスポーツカーの神髄

まず、XKポートフォリオ コンバーチブルに乗り込む。妖艶な空間はまさにジャガー。ドライブセレクターや新しいマルチメディアインターフェイスが、これまでとは違った新鮮な感覚ももたらしている。それにしてもジャガーは不思議なクルマだ。メルセデス・ベンツやBMWなどと同じカテゴリーに属するはずだが、そういったライバルと比較する気にもならない。

スタートボタンを押して、ゆっくりと走り出す。いきなりアクセルペダルを踏み込もうという気にならないのも、ジャガーだからだろう。しかし、速度を上げていくと、全長4790mm、全幅1915mm(XKR)という堂々たるボディが軽快に感じられるようになり、脈動感のあるV8サウンドとともに、いつの間にかアクセルを踏み込んでしまっていた。

最新のV8エンジンやアダプティブダンパーもさることながら、それら最新技術をどう使えばいいのか、どうすれば気持ちいい走りが実現できるのか、ジャガーはスポーツカーの真髄、ノウハウといったものを心得ているようだ。

XKRはさらに軽快。510psというと獰猛な野獣のように思われるが、XKよりもさらに俊敏で、まるでライトウエイトスポーツカーに乗っているような感覚。アダプティブディファレンシャルコントロールの効果もあって、ノーズの入り方がシャープで、ワインディングが楽しいのは、むしろこちらのほうだ。

今回の取材は箱根を中心に行ったが、多くの人から「素敵なクルマですね」と声をかけられた。多くを語らなくても、ジャガーの魅力、オーラは発散されているということだろう。最新のテクノロジーを盛り込みながら、伝統は重ねられ、進化していくのだろう。(文:Motor Magazine編集部 松本雅弘/写真:永元秀和)

画像: 510psの5L直噴スーパーチャージャーを搭載するXKRクーぺ。

510psの5L直噴スーパーチャージャーを搭載するXKRクーぺ。

ジャガー XK Portfolio コンバーチブル 主要諸元

●全長×全幅×全高:4790×1895×1330mm
●ホイールベース:2750mm
●車両重量:1780kg
●エンジン:V8 DOHC
●排気量:4999cc
●最高出力:283kW(385ps)/6500rpm
●最大トルク:515Nm/3500rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FR
●10・15モード燃費:7.0km/L
●タイヤサイズ:前 245/40ZR19、後 275/35ZR19
●車両価格:1450万円(2009年当時)

ジャガー XKR クーペ 主要諸元

●全長×全幅×全高:4790×1915×1320mm
●ホイールベース:2750mm
●車両重量:1810kg
●エンジン:V8 DOHCスーパーチャージャー
●排気量:4999cc
●最高出力:375kW(510ps)/6000−6500rpm
●最大トルク:625Nm/2500−5500rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FR
●10・15モード燃費:6.6km/L
●タイヤサイズ:前 255/35ZR20、後 285/30ZR20
●車両価格:1550万円(2009年当時)

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