トヨタ有利だが、なにが起きるかわからない
2021年、WRCはここまで11戦を戦い、トヨタが8勝、ヒュンダイが3勝となっている。
マニュファクチャラー選手権でトヨタがヒュンダイに47ポイント差をつけてトップ。1戦で獲得できる最大のマニュファクチャラーポイントは52ポイントであるため、トヨタの3人のドライバーのうち、ひとりでも総合7位以内でフィニッシュすれば、トヨタのマニュファクチャラー王者が確定するという状況だ。トヨタの圧倒的有利であることは間違いないが、なにが起きるかわからないのがラリーでもある。
2021年WRCマニュファクチャラーズランキング(第11戦終了時)
1位 トヨタ 474
2位 ヒュンダイ427
3位 Mスポーツ フォード 187
ドライバー選手権とコ・ドライバー選手権のタイトル争いは、トヨタの2台、セバスチャン・オジェ/ジュリアン・イングラシア組とエルフィン・エバンス/スコット・マーティン組に絞られている。3年連続でトヨタからワールドチャンピオンドライバーが誕生することはすでに決まっているが、両者の戦いは微妙。
2020年の最終戦ラリー・モンツァを振り返ると、ドライバー選手権2位につけていたオジェが優勝し、選手権1位のエバンスを逆転して通算7回目のドライバーズタイトルを獲得した。しかし今年、それとは逆の展開となり、ドライバー選手権1位のオジェを、2位エバンスが17ポイント差で追う形で最終戦を迎えることになった。
なお、オジェがWRCにフル参戦するのは今シーズンが最後であり、イングラシアは今回のラリー・モンツァでコ・ドライバーとしてのキャリアを終える。
2021年WRCドライバーズランキング(第11戦終了時)
1位 S.オジェ(トヨタ)204
2位 E.エバンス(トヨタ) 187
3位 T.ヌーヴィル(ヒュンダイ)159
4位 K.ロバンペラ(トヨタ) 140
5位 O.タナック(ヒュンダイ)128
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7位 勝田貴元(トヨタ)68
TOYOTA GAZOO Racing World Rally Teamのヤリ-マティ・ラトバラ代表は「3つの世界選手権タイトルを全て獲得することは、我々にとって夢だったので、それを達成できるチャンスがある状況で最終戦に臨むことに興奮しています。もし夢が叶ったとしたら、WRカー時代の終わりと、2017年のデビューイヤーに私自身もドライバーのひとりとしてドライブした、ヤリスWRC最後のラリーを最高の形で締めくくることができます。すべてが計画どおりに進み、マニュファクチャラーズタイトルを獲得できることを願っていますが、モータースポーツはフィニッシュするまで何も決まらないことを理解しています。また、ドライバーズタイトルに関して、セバスチャン(オジェ)とエルフィン(エバンス)のフェアな戦いを期待しています」とコメント。ドライバータイトルを争うトヨタのふたりのドライバーは次のように語っている。
セバスチャン・オジェ(ヤリスWRC 1号車)
「今回のラリーが私たちにとって、このスポーツにおけるひと区切りになることは事実です。しかし、現時点ではそのことについてあまり深く考えていませんし、それが最善のアプローチだと思っています。いつも通りベストを尽くし、両タイトルの獲得に集中します。もちろん、今回のモンツァで我々の状況は1年前に比べるとかなり有利ですし、ドライバー選手権で数ポイントリードしています。しかし、まだ終わったわけではないので、集中力を切らさないようにしなければなりません。先週、イタリアで良いテストができたので、適切なリズムでラリーをスタートし、良いパフォーマンスを発揮し、チャンピオンシップを意識しながら上位を目指して戦いたいと思います」
エルフィン・エバンス(ヤリスWRC 33号車)
「ドライバーズタイトル獲得の可能性を残したまま最終戦を迎えることができて良かったです。可能性はゼロではないので、スコットと共にベストを尽くして戦います。できる限り最高の結果を目指し、その上で状況がどうなるのかを見極めるアプローチをとるでしょう。シーズン中盤の苦しい時期を経て、ここ数戦は好調ですが、モンツァはまったく違うチャレンジになります。山岳地帯のステージはとても素晴らしいのですが、サーキットのステージは路面が非常に複雑で、流れるようなコーナーもありません。ラリー前のテストでそのすべてを把握することは不可能ですが、昨年の経験から、どう対処したら良いのかは理解しています」