ランボルギーニのモータースポーツ部門であるスクアドラ・コルセが長年培ってきたレースシーンでの技術を惜しみなく注ぎ込み開発されたのがウラカンSTOである。そんなスーパーモデルに富士スピードウェイ本コースで試乗した。(Motor Magazine 2021年12月号より)

優れたエアロダイナミクスと計算され尽くした軽量化

約1.5kmのホームストレートに入りアクセルペダルを床まで踏みつけると、V10自然吸気エンジンのエキゾーストノートが一段と甲高く響き独特の音色が聞こえてくる。緊張はするが、最高の瞬間でもある。

ウラカンSTOの本領を解き放ち、最高出力が発揮されている。スピードメーターに刻まれる数字がめまぐるしく変化する。250km/hを超えて260→270→280→290→295・・・300km/hまでもう少しというところでブレーキング。終始、安定した姿勢を保ちながら第1コーナーへ進入する。スタビリティが高く、これまでサーキットで試乗した、どのランボルギーニ車よりも安心感があった。 

今回、富士スピードウェイ本コースで試乗することが叶ったランボルギーニ ウラカンSTOは、2020年11月にサンタアガタ ボロネーゼで初公開されたスーパースポーツである。ウラカンSTOの名前は(Super Trofeo Omologata=スーパートロフェオ オモロゲータ)の頭文字文字が由来で、ワンメイクシリーズを競うウラカン スーパートロフェオEVOとデイトナ24時間レース3連覇、セブリング12時間レースで連覇のウラカンGT3 EVOといったレースの伝統と技術を受け継ぎながらロードカーとして生み出されたモデルである。

開発には、ランボルギーニのモータースポーツ部門であるスクアドラ・コルセが携わっている。そのため公道も走れるレーシングカーという色がとても強い。

搭載するのは、5.2L自然吸気V型10気筒エンジンで、最高出力470kW(640ps)/8000rpm、最大トルク565Nm/6500rpmを発生する。パワーウエイトレシオは2.09kg/ps、0→100km/h加速3.0秒、100→0km/h制動は30.0m、200km→0km/h制動は110.0mというスーパカーを名乗るに相応しいスペックを持っている。

画像: 最高速度は310km/h、0→100km/h加速3.0秒、0→200km/h加速9.0秒、100→0km/h制動距離30.0m、200→0km/h制動距離110.0mの性能を持つ。

最高速度は310km/h、0→100km/h加速3.0秒、0→200km/h加速9.0秒、100→0km/h制動距離30.0m、200→0km/h制動距離110.0mの性能を持つ。

エクステリアデザインは、ベースとなるウラカンから一新されている。チーフデザイナーのミティア・ボルケルト氏は、「ウラカンSTOは、ランボルギーニがこれまで成功を収めてきたウラカンのレースモデルが培ってきた技術を継承し、あらゆるディテールの美しさに反映している」と言う。つまり空力性能や軽量化などはレースシーンからフィードバックされ、デザインに反映されているというわけだ。

具体的には、フロントボンネット、フェンダー、フロントバンパーが、ひとつのコンポーネントとして一体化されているのもその一例だ。またフロントボンネットのエアダクトも新しく設けられている。これにより中央のラジエーターへの空気の流入が増え、エンジンの冷却効率を高めるとともに、ダウンフォースも生み出すという。さらにここには新設計のアンダーボディとリアディフューザーへ空気を導くフロントスプリッターも備えている。STOは、エアロダイナミクスの塊なのだ。

V10エンジンが搭載されるリア部分には、ボンネット内側の空気効率を向上させるためエアスクープが設けられ、またエアディフレクターがエンジンと排気口の温度調節に合わせてシュノーケルから大量に空気を流入させるという。

リアボンネットと一体化されたシャークフィンは、動力性能を高める役目がある。とくにコーナリング時にはフィンの両側でそれぞれ異なるレベルの圧力を発生させることでヨーを安定させ、リアウイングへの気流を整える役目も果たし、コーナリング時のウイング効果を高めているのである。

走行する環境に合わせて3つのドライブモードを用意

ダウンフォースを生み出すリアウイングは、手動で簡単に3段階に調整でき、サーキットの特性に合わせて空力バランスとドラッグを最適化する役割を持っている。この効果で空力バランスは約13%も変更できるという。

制動性能もサーキット走行に耐えられるよう強化され、ブレーキシステムに新しいブレンボ製CCMRカーボンセラミックディスクブレーキが採用されている。サイズはフロント390×34mm、リア360×28mmで、カーボンコンポジットブレーキに比べ倍の熱伝導率を持つ。これにより最大制動力は25%、減速性能は7%向上しているようである。

ウラカンSTOは、外装パネルの75%以上がカーボンファイバー製である。さらにフロント8.5J×20インチ、リア11J×20インチサイズのマグネシウムホイールを採用するなどで軽量化、タイヤは専用のブリヂストン製ポテンザタイヤを装着する。サイズはフロント245/30R20、リア305/30R20である。サスペンションは、アルミニウム製ダブルウイッシュボーン式となり、後輪操舵システム、RWSを採用している。

画像: 排気量5204ccのV10自然吸気エンジン。ボア84.5×ストローク92.8mm、圧縮比12.7対1で640ps/565Nm。

排気量5204ccのV10自然吸気エンジン。ボア84.5×ストローク92.8mm、圧縮比12.7対1で640ps/565Nm。

ウラカンSTO専用に開発された新しいANIMAには、新しいドライビングモード、「STO」、「Trofeo」「 Pioggia(雨)」が用意される。デフォルトは「STO」モードとなり、そして「Trofeo」モードは、全システムがドライ状態で最高のラップタイムを出せるようにセッティングされ、「Pioggia」モードは、トラクションコントロール、トルクベクタリング、RWS、ABSがウエット状態のアスファルト向けに最適化される。

そしてANIMAのドライビングモードに合わせ、LDVI(ランボルギーニ ディナミカヴェイコロ インテグラータ)は、サスペンションなどを最適化する。たとえば「Pioggia」では、ウエット状態で必要なトルクを発揮するように設定されるのである。

コックピット全体にもカーボンファイバーが多用されている。それはスポーツシート、フロアマット、ドアパネルなどである。リアアーチは技術パートナーのアクラポビッチ社と共同開発した高級チタン合金製で従来のステンレス製に比べ40%軽量化が実現された。

ウラカンSTOは、もちろん、ランボルギーニのカスタマイズプログラム「アドペルソナム」プログラムでエクステリア、インテリアともにフルカスタマイズが可能である。ペイントやトリムに数限りないオプションが用意されている。カラーリングもパーソナライズすることが前提となるデザインになっている。

パフォーマンスは、ノーマルタイヤであるにもかかわらず、本格的なレースモデルであるウラカン スーパートロフェオEVOのスリックタイヤとほぼ同じタイムでサーキットを走ることができるという。その実力を余すところなく解き放つことができるほどの運転スキルは持ち合わせていない筆者だが、それでもその片鱗は、本格的なサーキットで十分に感じることができた。

ランボルギーニは今後、新たに開発するモデルの電動化が避けられないし、そうしたロードマップも発表している。つまりウラカンSTOはV10自然吸気エンジン搭載のファイナルモデルだと考えられる。この素晴らしいエンジンを惜しみつつ、次世代のウラカンにも大いに期待している。(文:Motor Magazine編集部 千葉知充/写真:アウトモビリ・ランボルギーニ・ジャパン)

ランボルギーニ ウラカンSTO主要諸元

●全長×全幅×全高:4547×1945×1220mm
●ホイールベース:2620mm
●車両重量(乾燥):1339kg
●エンジン:V10 DOHC
●総排気量:5204cc
●最高出力:470kW(640ps)/8000rpm
●最大トルク:565Nm/6500rpm
●トランスミッション:7速DCT
●駆動方式:MR
●燃料・タンク容量:プレミアム・80L
●WLTPモード燃費:7.2km/L
●タイヤサイズ:前245/30R20、後305/30R20
●車両価格(税込):4125万円

This article is a sponsored article by
''.