グローバルで累計約278万台を販売するレクサスの主力モデルESが初のマイナーチェンジ。静粛性と乗り心地をさらに磨き上げ、旗艦モデルのLSにも匹敵する快適性を手に入れた。(Motor Magazine2021年12月号より)

レクサスのサルーンとしては唯一の前輪駆動モデル

かつてはトヨタブランドでウィンダムとして販売されていたESの最新版が、本来のレクサスブランドの一員として国内導入をはたしたのが2018年のこと。20年にも一部改良を実施したばかりだが、ES初となるマイナーチェンジは、内外装デザインや走りの領域まで大幅に手を加えた、かなり内容の濃いものとなった。

画像: ボディカラーは高光沢で金属感のある新色ソニッククロム。バージョンLはノイズリダクション付きの18インチホイールを装着する。

ボディカラーは高光沢で金属感のある新色ソニッククロム。バージョンLはノイズリダクション付きの18インチホイールを装着する。

レクサスのセダンで唯一のFF車でありグローバルで最量販となるESだが、登場時とは事情が変わっている。車格の近いGSが消滅したことで、これまで以上に重い使命を背負わされるのはいうまでもない。それに応えるべく、視覚面から感性に訴える部分まで「質」にこだわり、きめ細かく手が加えられている。

レクサスの主力サルーンとしての資質を高めるべく、内外装ともよりエレガントに洗練されたのは見てのとおりだ。

見た目も中身も大幅進化LSに迫る質感と快適さ

エクステリアでは、押し出しを強調し質感の向上を図ったフロントグリルをはじめ、鋭い表情を表現したヘッドランプや、高級感を増したデザインのホイールなどにより、存在感が際立って映る。金属の質感と高光沢を実現した新たに加わった外板色もよく似合う。

新色を採用したインテリアも、より落ち着いた雰囲気がありながらもモダンな空間へと進化している。オーナメント加飾の新しい色合いやヘアライン加飾の加工方法なども非常に凝っていて感心する。このあたりは価格の近い欧州プレミアム勢をも圧倒的に凌駕する、といっても過言ではない。

画像: 12.3インチタッチディスプレイはドライバーに最適な距離と角度に配置し、視認性と操作性を高めている。

12.3インチタッチディスプレイはドライバーに最適な距離と角度に配置し、視認性と操作性を高めている。

機能的にも、マルチメディアシステムのタッチディスプレイ化や画面へのガラス素材の採用により視認性や操作性を向上させたほか、スイッチをハンドル周辺に集約するなど細部まで細やかに気配りされたことにも感心する。

FFの強みを生かした広々とした室内空間もESならでは。とくに後席の足もとの広さと開放的な室内空間は旗艦のLSにも引けをとらない。駆動用バッテリーを後席下に配することでスペースを最大限に確保したというトランクも使いやすくて良い。もちろんAC1500Wまで使える電源コンセントも備えていて重宝する。

しなやかさを保ちながら、フラット感がより高まっている

走りについても、もともとESの仕上がりは悪くなかったと思うが、リアサスペンションメンバーブレースの剛性向上、ブレーキ関連の見直し、静粛性の向上などが伝えられる今回の改良による上がり幅はけっして小さくなかった。

従来も操舵力が軽く乗りやすかったものの、中立付近がやや曖昧で、修正舵を要するシーンが多いように感じていた。新型はハンドリングにも、動きは穏やかなまま位相遅れが払拭されて一体感が増し、本当の意味で乗りやすくなった。

乗り心地もしなやかさを保ちながらフラット感がより高まった印象を受ける。このあたりは独自のスイングバルブショックアブソーバーや、バージョンLには標準装備されるハイパフォーマンスダンパーが効いているに違いない。

動力性能に関する変更は伝えられていないが、現状で十分。静粛性もさらに高いレベルに達していて、路面の凹凸を通過したときの衝撃音の抑え込みも巧い。とにかく乗員に不快に感じさせる要素を、徹底して排除しようと努力したことがうかがえる仕上がりだ。

ブレーキについてもシステム制御やペダルの形状の変更、リンク機構内の構造の見直しによりコントロール性とペダル横方向の剛性感を高めたとのことで、たしかにフィーリングが向上したように思えた。

ADAS関連も大きく進化し、交差点における諸機能や低速時加速抑制機能、車線維持支援機能の車線認識性能の向上、カーブ速度抑制機能などさらなる充実が図られた。デジタルミラーについても、カメラの性能向上により視認性を高めたという。そのあたりはレクサスの最新モデルらしく抜かりはない。

他の競合車はもちろん、ESがここまで良くなると、一番の脅威となるのは、むしろ身内のLSなのかもしれない。(文:岡本幸一郎/写真:井上雅行)

レクサスES300hバージョンL主要諸元

●全長×全幅×全高:4975×1865×1445mm
●ホイールベース:2870mm
●車両重量:1720kg
●エンジン:直4DOHC+モーター
●総排気量:2487cc
●最高出力:131kW(178ps)/5700rpm
●最大トルク:221Nm/3600-5200rpm
●モーター最高出力:88kW(120ps)
●モーター最大トルク:202Nm
●トランスミッション:電気式無段変速機
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:レギュラー・50L
●WLTCモード燃費:22.3km/L
●タイヤサイズ:235/45R18
●車両価格(税込):715万円

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