そのすべてに試乗できるブランド体験型施設である。そんなPEC東京の概要をレポートする。(Motor Magazine 2022年1月号より)
日本の伝統美があしらわれたPEC東京
ロサンゼルス、アトランタ、ホッケンハイム、ライプツィヒ、ル・マン、シルバーストーン、フランチャコルタ、上海と世界に8カ所あるポルシェ・エクスペリエンスセンター(PEC)の9番目となるPEC東京が千葉県木更津市に開設された。ここでは911、タイカン、718、パナメーラ、マカン、カイエンといった全ポルシェモデルに試乗することができるのだ。
PEC東京の建物外観は、日本の伝統工芸品である江戸切子をモチーフにデザインされ、矢来紋という斜めの線で構成された伝統文様が採用される。また建物内には、ポルシェのクラシックモデルも展示、ポルシェドライバーズセレクションストアではショッピングも楽しめる。さらに国内外のサーキット走行ができるドライビングシミュレーターやカフェ、レストラン、会議スペースも備えている。
トラックコンテンツは、全長2.1kmのハンドリングコース/ローフリクションハンドリングトラック/オフロードエリア/ダイナミックエリア/キックプレート/ドリフトサークルの6モジュールがあり、ドライビングコーチとのマンツーマンで運転スキルを向上させることができるのである。
公道では体験できないポルシェの性能が確認できる
このPEC東京の最大の特徴は、ハンドリングコースで高低差のある3Dドライビングが可能なことである。これは元の地形を活かした立体構造のトラックとなり、ドイツのニュルブルクリンクにあるカルーセルやアメリカのモントレーにあるラグナセカのコークスクリューなどを再現したコースも持っている。ただしここは、レーストラックではなくあくまでエクスペリエンス(体験)施設であるという位置付けだ。
実際に各モジュールを走ったが、そこでは公道で体験できないローンチコントロール、アンダーステアやオーバーステア状態からの車両コントロール、意図的にドリフト状態を維持する操作方法などの貴重な体験ができた。
ところでPEC東京の開設に合わせ、そこにつながる木更津市の市道125号線の一部区間(1km)が「ポルシェ通り(Porsche Strasse/ポルシェストラッセ)」と命名された。これは国内の輸入車ブランドとしては初のことである。
ポルシェは、総額50億円以上という投資を行い、輸入車ブランドとしては類を見ない規模のスポーツドライビング施設や日本公道のネーミングライツ、さらには独自の社会貢献プログラムを立ち上げるなど、これまで以上に日本での活動を本格的にしている。こうしたことからもポルシェの日本市場への「本気度」が強く感じられる。(文:Motor Magazine編集部 千葉知充/写真:井上雅行)
ポルシェ・エクスペリエンスセンター東京のコース概要
A:ハンドリングコース/全長 2.1km の周回距離を持つコース。高低差もある。
B:カルーセル/ドイツ ニュルブルクリンクにあるカルーセルを再現した鉢状コーナー。
C:コークスリュー/アメリカ ラグナ・セカにあるS 字コースのコークスクリューを再現。
D:ローフリクションサークルトラック/濡れた路面でアンダー&オーバーステア特性を体験。
E:キックプレート/濡れたエポキシ面の地面に埋め込まれた油圧作動式プレート。
F:オフロードエリア/渓谷、倒壊した木材、40 度の傾斜などのオフロードコース。
G:ダイナミックエリア/200m×30mの舗装エリア。ローンチコントロールも体験できる。
H:ローフリクションハンドリングトラック/アンダー&オーバーステアの修正などを体験。