ライズ Z ガソリン 試乗 ── さながら直噴ターボを思わせる、低速域での躍動感
次に、ライズの純ガソリンモデルに乗り換えてみた。
どうしたってトヨタ/ダイハツ初のシリーズハイブリッドユニットに話題を持っていかれがちだけれど、実はこちらの1.2L WA-DE VVTエンジンも機構的に見るべきものは多い。高タンブルストレートポートやクールドEGRシステムが燃焼効率を高めるとともに、2系統ある冷却システムによって暖機を促進、無駄な燃料消費を抑えてくれる。
ともすればエコ一辺倒で扱いにくいエンジンを想像してしまうかもしれない。けれど、実際に走らせてみるとその味付けは、想像以上にフレキシブルで活発なものだった。
スペック自体は最高出力87ps、最大トルク113Nmと控えめだが、とくに際立つのが低速域からのアクセルペダルの踏み込みに対するツキの良さだろう。感覚的にはハーフスロットル程度に踏み込むだけで、街乗りでは十分キビキビ駆け回ることができた。
3気筒らしいリズミカルな脈動感を伴いながら、走り出しからグイグイと加速していく。それはどこか、欧州勢が好んで搭載している小排気量直噴ターボのフィーリングに通じるものがある。
アクセルペダルの踏み込みに伴って高まっていくエンジン音を、加速Gとシンクロした「盛り上がり」として楽しむことができるのは、純ガソリンモデルだからこそ。あくまで感覚的なものかもしれないが、エンジンが回っている時のハイブリッドよりも、純ガソリンモデルの方がクリアな音質で耳ざわりも良いように思えた。
本気モードの商品力強化で、買い手の悩みは深まるばかりかも
純ガソリンモデルの乗り味はやはり、ハイブリッドと微妙に異なっている。1トンを切る軽量ボディとスタンダードなEPSの組み合わせは、すべての操作感がより軽めなタッチだ。とはいえ頼りがいのあるボディの剛性感は変わらないので、安っぽい印象はあまりない。
先進性という意味ではもちろん、シリーズハイブリッドへの注目度が抜群に高い。一方で、徹底的に練りこまれた感のある1.2L 純ガソリンエンジン車のバリューも高い。しかもふたつの新パワートレーンだけでなく、4WDにのみ設定が残された1L直3ターボも実は、非常に完成度が高い。
一気に選択肢が広がったライズ/ロッキーは、それぞれに個性的でわかりやすい魅力と高い品質を感じさせてくれた。なんとも気合の入ったバージョンアップは、もちろん大歓迎。だが買い手の悩みはおそらくますます、深まることになるのだろう。(文:Webモーターマガジン編集部 神原 久/写真:井上雅行)
ダイハツ ロッキー Premium G HEV 主要諸元
●全長×全幅×全高:3995×1695×1620mm
●ホイールベース:2525mm
●車両重量:1070kg
●エンジン:直3 DOHC
●総排気量:1196cc
●エンジン最高出力:60kW(82ps)/5600rpm
●エンジン最大トルク:105Nm(10.7kgm)/3200-5200rpm
●モーター最高出力:78kW(106ps)/4372-6329rpm
●モーター最大トルク:170Nm(17.3kgm)/0-4372rpm
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:レギュラー・33L
●WLTCモード燃費:28.0km/L
●タイヤサイズ:195/60R17
●車両価格(税込):234万7000円
トヨタ ライズ Z(ガソリン) 主要諸元
●全長×全幅×全高:3995×1695×1620mm
●ホイールベース:2525mm
●車両重量:980kg
●エンジン:直3 DOHC
●総排気量:1196c
●最高出力:64kW(87ps)/6000rpm
●最大トルク:113Nm(11.5kgm)/4500rpm
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:レギュラー・36L
●WLTCモード燃費:20.7km/L
●タイヤサイズ:195/60R17
●車両価格(税込):203万9000円