今後数年でさらに高まるであろうクルマの電動化。PHEVやBEVはどのような方向性で進んでいくのだろうか。ここでは今後のEV市場の行方について考察しよう。(Motor Magazine2022年1月号より)

PHEVとBEVマーケットで好調な輸入車

日本市場における電動化モデルの販売動向を調べたところ、興味深い傾向が見えてきた。日本自動車販売協会連合会は燃料ごとの販売台数を毎月発表しているが、私は2021年の1月から10月までを通算し、日本市場全体と、その中に占める輸入車の比率を独自に算出してみた。

この間、純然たるガソリン車の販売台数は合計101万5616台で、うち12万3875台が輸入車。そのシェアは、驚くべきことに12.2%に達する。これがハイブリッド車になると市場全体の84万5330台に対して輸入車は6万9507台でシェアは8.2%。プリウスに代表される日本製ハイブリッド車の好調ぶりが、この統計からも窺い知れる。

面白いのはここからだ。PHEVは市場全体で1万7744台しか売れていないが、このうちの実に4402台が輸入車で、その比率は24.8%に跳ね上がる。この傾向がさらに顕著なのがBEVで、1万6569台中、輸入車は5812台に上り、実に全体の35.1%を占める。つまり、PHEVやBEVなど、本格的な電動車になればなるほど、輸入車の売れ行きが好調ということになる。この結果を、私なりに分析してみた。

日本車メーカーによれば、PHEVはとにかく売りにくいらしい。その理由を、彼らは「PHEVの価値が難しくて、うまく理解してもらえないから」と説明する。

画像: PHEVとBEVマーケットで好調な輸入車

魅力的な電動車は輸入車の方が多い?

日本車ユーザーよりも輸入車ユーザーの方がクルマに関する関心が高く、本来は難しいはずのPHEVの効能を理解しているユーザーの比率が高いという考察はもちろん成り立つ。ただし、それと同じくらい、輸入車に魅力的なPHEVが多いからだとは考えられないだろうか?いや、むしろそちらの方が断然多いのかもしれない。

同様のことはBEVについても言えて、おそらくテスラがBEV全体に占める比率が高いことが事実だとしても、それ以外の海外メーカーから続々と魅力的なBEVが登場していることが、その傾向を後押ししていると考えられる。

たしかに現状ではエンジン車に比べてPHEVやBEVの方が車両価格が高価であるのは事実。フル充電での航続距離や充電施設のことを考えれば、BEVが不便であることも間違いない。それでも、その価格差や不便さを埋め合わせるなにかがあれば、PHEVやBEVにも販売上の勝機はあると私は考える。

同じ背景から、現状の電動車を「環境に優しい」という理由だけで顧客に購入を納得してもらうのは難しいはず。PHEVやBEVは確かに走行時にはCO2を排出しないが、よく知られているとおり、発電時にCO2を発生する恐れがあるほか、生産時や廃棄時にも大量のCO2を発生する。

それらをすべてひっくるめたライフサイクルアセスメントの評価を見ても、BEVとガソリン車の差は意外と小さかったり、使用条件いかんではBEVの方がCO2排出量は大きいこともありうる。だから、PHEVやBEVの環境性能を過信することは禁物である。

それでも今後はBEVの販売比率は確実に上昇するだろう。それは、BEVの方が発電方式を工夫することでCO2を削減できる余地が大きいことと、各国がガソリン車やHEVの生産を規制し始める可能性があるからだ。

では、BEVのシェアが拡大すると、どのようなことが起きるのだろうか?

私は、各ブランドの個性がより重視される時代がやってくると確信している。なぜなら、BEV化は自動車の製品としての個性が失われる懸念があり、だからこそ各ブランドには個性を強調した製品作りが求められるようになるからだ。そうした傾向は、上述した統計にすでに現れているといっても過言ではなかろう。

だから、私はいま、とても楽しみにしている。いま以上に個性的なBEVが各ブランドから登場する未来のことを・・・。(文:大谷達也/写真:アウディAG、FCA)

画像: 歴史ある建物と最新BEV。こんな光景が当たり前の時代になるのだろうか。

歴史ある建物と最新BEV。こんな光景が当たり前の時代になるのだろうか。

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