北米トヨタから、自動運転技術を使ったハンズフリードリフ実験の映像が公開された。最先端の人工知能技術を搭載したGRスープラが、ドリキン土屋圭市氏も真っ青の華麗なるドリフトでサーキットを舞う。映像はもちろん迫力たっぷりだけれど、ここから生まれる「自動運転のテクニック」は、クルマの安全性を革新する可能性を秘めている。

人工知能の進歩がもたらす、より安全で持続可能なモータリゼーション

画像: TRIの研究者たちは、クローズドコースでの害物を避けながら自律的ドリフトを可能にするマシンのプログラミングに成功した。

TRIの研究者たちは、クローズドコースでの害物を避けながら自律的ドリフトを可能にするマシンのプログラミングに成功した。

NMPCを通してGRスープラに与えられたのは、「プロのカードライバーが持つ「本能的な反射神経とそのスキル」だ。進化したソフトウェアはトラックを周回する間、0.05秒ごとに軌道を計算しなおし続ける。コース上の障害物も自律的に回避しながら、GRスープラはより優雅でバランスのとれたドリフトを見せるようになっていく。

この技術の開発を進めているのは、2015年に北米カリフォルニアに設立されたToyota Research Institute (TRI)だ。ロボット工学、エネルギー・材料、機械学習のほか、人工知能の進歩に向けた研究を行う。その中でもギル・プラット博士が率いる研究チームは、私たちの生活をより安全で持続可能なものにすることに焦点を当てている。そのために、人間の能力を増幅する技術を開発し続けているという。

NMPCもそのひとつとして、ドライバーの能力を効率よく増幅させることを目的とするものだ。その開発には、世界的なチューニングブランドGReddyとドリフト界のレジェンドであるケン・グシ氏が協力、専門的なスキル構築をサポートしている。

近い将来、華麗なる自動ドリフトで事故を回避するGRスープラが登場するかも

画像: テストランは、北米カリフォルニアのサンダーヒルレースウェイで行われた。使われたのは約2マイルの西コースだ。

テストランは、北米カリフォルニアのサンダーヒルレースウェイで行われた。使われたのは約2マイルの西コースだ。

TRIがこうしたテストを行い、ソフトウェア開発に注力している理由は、極端に危険な状況下でのドライバーの能力をサポートすることで、安全性を向上させることができると考えられるからだ。先進安全技術が人間の能力限界を超えた部分でアシストすれば、車両安全技術の限界をより高めることが可能になる。

「濡れた道路や滑りやすい道路に直面すると、熟練したドライバーは姿勢変化をコントロールすることで車をドリフトさせることを選択できるかもしれません。しかし、私たちのほとんどはそんな熟練ドライバーではないのです」とTRIリサーチサイエンティストのジョナサン・ゴー氏が語っている。

リリースによれば、米国では毎年、自動車事故によって約4万人の死亡者を出している。世界中では約135万人に達するが、極端なシチュエーションで発生した事故にあっては、一般的なドライバーが対処できる限界を超えてしまう場合もあるという。そんな時、自律的なドリフト制御を利用すれば、危険を回避できる可能性はもしかすると高まる。

世界一長い耐久レースと言われる25時間エンデュランスも開催される「サンダーヒルレースウェイ」の西コースを、ダイナミックに華麗に、ドリフトラインを描きながらコースをクリアしていくGRスープラ。その走りは、近未来に実現される「アクティブセーフティ」の理想像を、描いている。(文:Webモーターマガジン編集部 神原 久)

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