SDGsへの積極的な取り組みをさらに加速させながら、多彩なニューモデルのローンチを控えるBMW。積み重ねてきた伝統は、時代の変化を着実にリードしていく。ここではビー・エム・ダブリュー株式会社 代表取締役社長クリスチャン・ヴィードマン氏に、2022年に描く将来への展望を訊いた。
電動化への取組みは1972年から。2022年は『M』でも盛り上げます
本誌 千葉知充(以下、MM) BMWは、かなり早い段階から、環境問題の具体的なソリューションとして電気自動車に着目されていましたね。
クリスチャン・ヴィードマン 氏(以下、ヴィードマン) それは、1972年にローンチされた1602ベースの電気自動車のことですね。ミュンヘンオリンピックで使われた、フルバッテリーEVでした。BMWが新しいテクノロジーの実用化を将来に向けて進めていくのだ、という姿勢を世界に向けて明らかにした、非常に重要な出来事だったと思います。
作られたのは2台のみでしたが、それは、BMWが将来にわたって先進技術をリードするブランドであるという明確なサインを、当時の人々に示したものだと思っています。これをきっかけとして、1973年には社内に、環境問題への対応を担う新しい部門が創設されました。
BMWではそれほど早い時期からいわゆるSDGsに強い関心を持ち、本格的な組織がすでに立ち上げられていたのです。
MM そうした取り組みのひとつの結実が、BEVであるBMW i3の市販化ということになるのでしょうか。
ヴィードマン i3の市販化が示していたものは、私たちが内燃機関で培ってきた技術をもとに電動化に取り組むという、現実的な形での実証でした。ただ単にドライブトレーンを電動化したことにとどまらず、たとえばシャシ、ダイナミクス制御といったすべての技術において、20世紀半ばから進められた多様な研究開発を統合したプロダクトだったのです。あらゆる方向からサスティナビリティを実現する、というアプローチがこのクルマをもって具現化されているということを考えると、やはりスペシャルな1台だったと考えています。
MM そうしたコンセプトはもちろん、すべてのBMWのクルマづくりに反映されていると考えていいのでしょうか。
ヴィードマン そうです。まさに、現代のモデルにも反映されていると理解しています。電動化のドライブトレーンもそうですし、高度な最先端の材料を使うことや、エフィシェントダイナミクスを採り入れたデザインなど、すべての面でクルマづくりのリーディングカンパニーならではである、と自負しています。
MM 2021年に日本でも発表されたiXだけでなく、iX3など、既存ラインナップの電動化にも非常に積極的ですね。
ヴィードマン そうした動きは、今後も世界各国で進められる予定ですね。それほどSDGsは、私たちのビジネスモデルを実現していく上で、非常に重要なファクターなのです。私たちは2001年から「サスティナビリティレポート」を発行してきましたが、このレポートそのものが、サスティナビリティに対する真剣度を表していると言えるでしょう。
リデュース、リユース、リサイクルといった循環経済にともなうさまざまな活動を、早い段階から実際にビジネスに反映させています。私たちの場合はさらにもうひとつ、「リシンク」、さらに考え直そうという、これまでとはまったく違うアプローチも加えながら推進中です。
MM リサイクル素材の活用についてはi3くらいから始めていらっしゃると思うのですが、たとえば今は、BEV以外にもそういったリサイクル素材を広めているということで、よろしいですか。
ヴィードマン そのとおりです。BEVに限らず、いろんなモデルに関して素材の再利用を進めています。たとえばアルミですとか、とくにバッテリーはレアアースなどもあります。そうした資源を本当にきちんとリサイクル、リユースするということが重要だと考えています。