クルマ選びから購入、配送情報の確認まで、すべてをオンラインで
2001年に日本の乗用車市場へ参入した現代自動車ジャパン(当時)は、思ったような販売実績を上げられず、2009年に日本市場から撤退する。その時点で約1万5000台の車両が日本で利用されており、2022年の現在も600台ほどが実働しているという。12年を経たいまも、そういったユーザーに対しては毎年車両点検を実施するなど、絆を守り続けてきた。
2022年、日本法人の社名を「ヒョンデ モビリティ ジャパン」へと変更し、「脱炭素化」をキーワードに日本の乗用車市場へと再参入する。日本市場における中心ターゲットは、「クオリティ タイムシーカー:かけがえのない時間を求める人々」としている。自分に合うライフスタイルを求め、時間や場所にとらわれない自由な生き方や多種多様な暮らし方を楽しむ人たちだ。
ヒョンデは日本のユーザーに提供する新しいライフスタイルを「LIFE MOVES.」と名づけ、以下の3つのモビリティ戦略でそれを具現化していく。
1:スマート エクスペリエンス オブ モビリティ(Smart Experience of Mobility)
コロナ禍による対⾯接客への懸念や、スマホネイティブの若年層消費者へのコミュニケーションの観点から、これまで以上にオンライン販売のニーズは⾼まっている。そこで時間と場所の制約を受けないスマートな⾞両購入経験をオンライン完結で、また、ワンプライス販売によるユーザーにわかりやすい購入環境を提供する。つまり、ヒョンデは日本にディーラーを持たない。
シームレスな独自のプラットフォームを設定し、⾞両選びから、試乗予約、⾒積もり、注⽂、決済、配送情報の確認まですべてをオンラインで完結する。車両点検や整備のサポートなど、すべての機能は1つのIDで利用できる。
そのため、試乗や購入相談、点検、整備をワンストップで提供する「ヒョンデ カスタマーエクスペリエンスセンター」を、2022年夏に神奈川県横浜市に開業予定だ。その後、全国の主要地域に各地の協⼒整備⼯場と連携して展開する。さらに、全国に対応可能なロードサービス体制により、いつでも、どこでも顧客最優先のサポートが可能な体制を構築する。
2:サステイナブル モビリティ(Sustainable Mobility)
既に当Webモーターマガジンでも紹介したように、日本市場における販売車種はZEV(ゼロ エミッション ビークル)に特化し、カーボンニュートラルの実現に貢献する。
販売する車両は、バッテリー電気自動車(BEV)の「アイオニック5(IONIQ 5)」と、燃料電池電気自動車(FCEV)の「ネッソ(NEXO)」。2台とも、カテゴリーとしてはSUVにあたるモデルだ。
車両価格は、アイオニック5が479万〜589万円、ネッソが776万8300円。日本車では、日産のクロスオーバーSUV電気自動車「アリア」が539万〜790万200円、トヨタの燃料電池自動車「MIRAI」が710万〜860万円だから、なかなか戦略的な価格設定といえるだろう。
3:フリーダム イン モビリティ(Freedom in Mobility)
クルマを所有だけでなく共有、つまりシェアリングでモビリティライフを楽しめるビジネスモデルを展開する。2022年内にアイオニック5を100台、ネッソを20台、カーシェアプラットフォーム「Anyca(エニカ)」のオフィシャルシェアカーに投⼊する。アイオニック5は2⽉下旬からサービスを開始する予定だ。
また、車両を購入したオーナーは自身のクルマをエニカでシェアするサービスや、サブスクリプションも展開予定だ。
さらにヒョンデでは、ZEVから⽣まれるさまざまなライフスタイルを体感できるポップアップスペースとして「ヒョンデ ハウス 原宿」を2022年2⽉19⽇(⼟)〜5月28日(土)の期間限定で開設する。アイオニック5やネッソの試乗や購入相談、またコミュニケーションの拠点となるラウンジなど、さまざまなコンテンツが楽しめる。
今回のヒョンデだけではなく、ボルボ・カー・ジャパンも電気自動車のC40リチャージをサブスク(台数限定)やオンラインで販売したり、国産車メーカーもオンラインからのサブスクを展開するなど、販売手法を増やしている。クルマのメインストリームがエンジン車から電気自動車に移行しつつある今、購入方法も新たな方式に移行していくのだろうか。
ヒョンデ モビリティ ジャパンでは、システムの構築などの関係でオーダーの受付開始は2022年5月から、デリバリーは同年7月からを予定している。まずは、その動向に注目しておきたい。(文:Webモーターマガジン編集部 篠原政明/写真:ヒョンデ モビリティ ジャパン)