日本のモータリゼーションとともに月刊モーターマガジンは発行を重ね、今号で800号を迎えた。その間、約67年。自動車業界は今、100年に1度という大変革期を迎えている。そこで、この特集では日本を代表するメーカーやインポーターのキーマンにインタビューし、近未来の展望やカーボンニュートラルへの取り組みなどを訊くことにした。訊き手:Motor Magazine編集長 千葉知充(Motor Magazine2022年3月号より)

2022年の年央に「ソルテラ」を発売。今後はBEVに注力するのかと思えばさにあらず。主体はあくまでスバルファンであり、現在はその選択肢を拡大しているところだという。ここでは株式会社SUBARU 常務執行役員 CTO(最高技術責任者)技術本部長 技術研究所長 藤貫哲郎 氏に、2022年に描く将来への展望を訊いた。

画像: 【Profile】藤貫哲郎 :1986年富士重工業(現SUBARU)入社 スバル技術本部 車両研究実験第一部、スバル研究実験センター長、車両研究第四部部長、第一技術本部副部長などを歴任、2019年より執行役員および技術研究所長。2020年4月から常務執行役員 CTO(最高技術責任者)技術本部長および技術研究所長。

【Profile】藤貫哲郎 :1986年富士重工業(現SUBARU)入社 スバル技術本部 車両研究実験第一部、スバル研究実験センター長、車両研究第四部部長、第一技術本部副部長などを歴任、2019年より執行役員および技術研究所長。2020年4月から常務執行役員 CTO(最高技術責任者)技術本部長および技術研究所長。

期待に応えるクルマづくりは、パワートレーンが変わっても不変

本誌 千葉知充(以下、MM) SDGsに注目が集まっています。スバルのスタンスを聞かせて下さい。

藤貫哲郎氏(以下、藤貫) スバルは何のために存在するのか、という問いに我々が出した答えは、お客さまを始めスバルを支えてくれるみなさまの役に立つ存在でありたい、クルマはお客さまの役に立つ道具であり続けたいということです。愉しく運転できる、降雪地域でも安心して運転できる、そんなクルマづくりをこれからも継続していきたい。そのために、カーボンニュートラルや気候変動抑制のための取り組みを続けています。

MM 2050年のカーボンニュートラル達成を目標に掲げていますね。

藤貫 とは言え、すべてはお客さまあってのことです。我々の目標をお客さまに押しつけるつもりはありません。あくまで、お客さまのご要望や社会状況の変化にフレキシブルに対応できるように選択肢を準備しているというのが現状です。

MM その選択肢とはなんですか。

藤貫 たとえば、2022年央には100%BEVの新型車「ソルテラ」を発売します。また、時期は明言できませんがストロングハイブリッドも発売予定です。今後は内燃機関に加えてストロングハイブリッドとBEVの展開を進めていきます。

MM それら電動車の中で、スバルらしさをどのように表現していくのですか。

藤貫 ストロングハイブリッドは、プロペラシャフトのあるクルマでスバルらしさ担保していきます。BEVのソルテラも、4輪の制御に関してスバルらしさにかなりこだわっています。ちなみにソルテラは、北米でも大変な関心を寄せていただいています。
環境性能はもちろんですが、210mmの最低地上高を確保するなど、今までのBEVでは考えられなかった高い悪路走破性能が好評です。スバルが作るBEVはやっぱり違うね、という評価をいただいています。

MM 定評あるスバルAWD技術がBEVも遜色なく盛り込まれているのですね。

藤貫 意外に思われるかも知れませんが、実はBEVの研究はかなり早い時期から始めていて、2005年の東京モーターショーでBEVコンセプトの「R1e」を発表しています(2009年にはブランド初のBEV「プラグイン ステラ」を市販)。
当時は1モーター式前輪駆動でしたが、その後も研究は連綿と続いていて、2モーター、さらに後輪左右にトルクベクタリング機構を盛り込んだ3モーターの実験車も存在しました。ノウハウはすでに十分蓄積できています。どのような制御をすればスバルらしいクルマになるのか、そのポイントはわかっています。

画像: 2005年の東京モーターショーで公開された100%BEVのコンセプトモデル「R1e」。

2005年の東京モーターショーで公開された100%BEVのコンセプトモデル「R1e」。

MM その知見がAWDのBEV、ソルテラにも生かされているわけですね。

藤貫 はい。余談になりますが、ソルテラの開発をとおして改めて思ったことがあります。今までのスバルは、水平対向エンジンを始め、シンメトリカルAWD、アイサイトなどハードウエアでお客さまに価値を提供してきました。
ソルテラから始まった緻密な「制御」という技術や概念によって、仮にハードウエアが同じでもソフトウエアでスバルらしい価値を提供できることが改めて思い出されたのです。ハードウエアはあくまで手段であり、そればかりにこだわっていては、お客さまのニーズや時代の要請に応えることができなくなりますね。

MM ソルテラを皮切りに、今後BEVのバリエーションを増やすのですか。

藤貫 現段階で申し上げられることはないのですが、今後はBEVも検討していかなければいけないと考えています。

MM ストロングハイブリッドにも注力されるとのことですが、こちらは全モデルにラインナップするのでしょうか。

藤貫 将来は全モデルで何らかの電動化は必須になってくるでしょう。ただ、エネルギー問題の帰着点はまだ見えていません。現時点で絞り込むのは危険であるという考えもあります。現状はどのような時代になっても、生き残っていけるための準備をしている段階ですね。

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