戦前のアルファロメオにも、クーペと対をなすオープンスポーツがあった
美しきロードスター。ブランドの歴史を辿れば、オープンモデルこそ、アルファロメオのスポーツ性を語るに相応しい存在であるのかもしれない。
戦前のアルファロメオには、優美なグランツーリズモのクーペと対をなして、よりコンペティティブな世界で戦ったオープンスポーツ=グランプリマシンがあった。
いずれにも、6C(セイ・チ)や8C(オット・チ)といったネーミングが使われている。数字はシリンダーの数を、Cはイタリア語でチリンドリ(シリンダー)を示すものだ。
現代によみがえった8Cにも、このたび、クーペのコンペティツィオーネに続いて、オープンのスパイダーが設定されることに。もっとも、戦前のようにオープンモデルの方がよりレーシー、というわけにはさすがにいかないのだけれど……。
クーペモデルの市販化が正式にアナウンスされる前に、8Cスパイダーのコンセプトカーは登場していた。順を追って説明しておくと、2003年秋に8Cコンペティツィオーネの、2005年夏に同スパイダーのコンセプトカーがそれぞれ発表され、2006年秋のパリ国際モーターショーにて前者が正式にデビューし、2007年秋に生産開始。そして2009年春のジュネーブ国際モーターショーにおいて、8Cスパイダーの市販モデルが発表されている。
クーペモデルと同様に、世界限定500台。日本市場への割当ては70台前後とされているが、ほぼ完売で残り枠はわずかということだ。
エレガントなスタイルを生み出すために、ソフトトップを採用
モデル概要を振り返っておく。フェラーリ/マセラティ製4.7L V8+トランスアクスルの2ペダルロボタイズドミッションというパワートレーンや基本的なシャシデザインなど、主要メカニズムはクーペとまったく同じと言っていい。
ただし、オープン化に伴って燃料タンクの位置を前方に50cmずらした他、当然ながらコイル/ダンパーのセッティング変更(バネは硬く、ダンパーは柔らかく)やフロア強化(ストラットタワーバーやクロスバー、ブレースの追加など)を実施している。また、ブレンボ製CCM(カーボンコンポジットマテリアル)ブレーキを標準とした点も目新しい。
リトラクタブルルーフ全盛の時代にあって、クーペと変わらぬ運動性能とスタイルのエレガントさを保つために、あえてソフトトップをチョイス。ラッチの解除と左右のトノカバー装着は手動という半電動タイプだ。ダッシュボードセンターに配されたスイッチを使って開閉するが、トノカバーの設置を除いた開閉時間は、およそ7〜9秒である。
カーボンとアルミニウム、レザーで構成されたインテリアも、前を向いて座っているかぎりクーペとまったく同じ。当然ながらシート背後のスペースはつぶされており、代わりにリッド付きのトランクがある。もっとも、それほどの容量はなく、実用性という意味ではクーペに相当劣っている。デザイン重視、パフォーマンス重視のオープンスポーツであることが、そのことからもわかるだろう。