2009年、日本でもクリーンディーゼルが大きな注目を集める中、BMW AGが極限まで燃費を追求した320d エフィシエント・ダイナミクス・エディションを発表した。その燃費は実に24.4km/L。日本に導入されることはなかったが、欧州では大きな話題となった。注目される秘密はどこにあったのか。Motor Magazine誌はドイツ本国でこのモデルの試乗テストを行っている。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2009年11月号より)

パワーを抵抗なく活用する特殊フライホイールを開発

現状のヨーロッパにおける燃費競争は、日本のようなハイブリッド車オンリーとは異なり、様々な手段により進められている。中でもディーゼルエンジン搭載モデルの改良は、まさに血の一滴を絞るような繊細な技術を駆使して行われている。

画像: エンジンは最高出力を抑え、最大トルクは太くされた。こうしたセッティングと新フライホイールで低燃費を実現。

エンジンは最高出力を抑え、最大トルクは太くされた。こうしたセッティングと新フライホイールで低燃費を実現。

というのも、今回のワークショップのホストであるBMWの世界市場におけるディーゼルの割合は42%、さらにヨーロッパでは67%に達しているという事実が存在しているからなのである。

さらにドイツではやはり「走りの性能を犠牲にしてはならない」という鉄則が存在しているためである。つまりドロッとした感触と高速域での効率の悪さを払拭しきれないCVTを利用した日本製のハイブリッドは、高速移動が不可欠なドイツではなかなか容認できないのだ。

もちろんドイツユーザー向け、高速志向のハイブリッドの研究は続けられており、来年中旬以降からはそうしたモデルも発売される見通しである。しかし、中期的にはハイブリッドよりも、価格の比較的安い燃費改善の解決方法はまだディーゼルにあると考えられているようで、そのひとつがBMWによって公開された。

それがこの320dエフィシエント・ダイナミクス・エディションと名付けられたモデルである。外観はまったく320dと共通なこの3シリーズの燃費は、欧州基準で100kmあたり4.1L、1kmあたりのCO2排出量は109gと、スタンダードの320dよりも燃費がマイナス17%の驚異的な数値となっている。

パワーを抵抗なく活用する特殊フライホイールを開発

この燃費性能を可能にした主役は、重力と遠心力を利用した特殊フライホイールである。日本語で適当な訳が見当たらないので、当日ワークショップで説明されていたドイツ語をそのまま訳すと「デュアル・マス遠心振り子式振動防止装置付きフライホイール」である。

画像: 320dエフィシエント・ダイナミクス・エディションに採用された「デュアル・マス遠心振り子式振動防止装置付きフライホイール」。このフライホイールにより、これまでよりエンジンを低回転域で使うことができるようになった。

320dエフィシエント・ダイナミクス・エディションに採用された「デュアル・マス遠心振り子式振動防止装置付きフライホイール」。このフライホイールにより、これまでよりエンジンを低回転域で使うことができるようになった。

自動車パーツのシステムサプライヤーであるルークが、長い間研究を続けてきたこのフライホイールは、言葉どおり円周上にバランサーを振り子状に並べたもので、遠心力と振り子の力で低速でのギクシャクな回転を防止している。つまりそのおかげで、エンジンがごく低回転領域で低いトルクで働いていても、なんとかトロトロ運転ができるようになっている。

もちろんこの効果を最大限に発揮できるように、パワーは177ps/4000rpmから163psへ落とし、最大トルクは350Nmから360Nm/1750〜3000rpmへとわずかながら上げている。

そしてギア比は全体に高められ、空力特性の改善のために車高は低くセットされ、さらに駆動系を改善して抵抗を減らしているそうだ。

こうした対策の結果、ダイナミック性能が多少ではあるが落ちている。すなわち0→100km/hは7.9秒から8.2秒へ、そして最高速度は230km/hから225km/hへとわずかではあるが後退、また6速で80km/hから120km/hの中間加速も1.2秒低下していると発表されている。

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