レクサスらしいドライビングテイストを表現するために
レクサスは今、ブランド変革を強力に推進している。過去に豊田社長自ら発言した「レクサスはつまらない」という危機感から、クルマづくりやブランドのあり方をあらため、新たなラインナップで表現していくという。
その成果、新世代レクサスの第1弾として登場したのが2021年10月発表のNXであり、その後LXとRZへと続き、そして2022年6月、レクサスの世界販売台数のうち約4分の1を占めるプレミアムSUVのRXが公開された。これまでのL字ロゴから変わり、テール部分に入れられた「LEXUS」エンブレムやスピンドルボディなどのアイコンなどを取り入れ、新世代であることを強調する。
では新世代レクサス車たちの魅力と、そして開発のこだわりとは何か。今回、会場に集まった4人のチーフエンジニア(以下、CE)は口を揃えて「素性の良さ」という言葉を使った。抽象的な表現だが、要はプラットフォームやアッパーボディの剛性、車両重量、重量配分、重心高など、クルマの運動能力を左右する基礎性能を高めることだ。
開発現場における作業は一見地味なものになるのだという。しかしここをしっかりと鍛え上げることにより、レクサスらしいドライビングテイストの開発方針であり、ドライバーの意思に忠実に応える「レクサスドライビングシグネチャー」の実現につながるわけだ。
隣の開発室でどんな新技術が生まれ、それをどう活用できるのか
しかもこの素性の良さをはじめとした性能・技術・アイテムは次なる新型車に流用、さらに精度を高められてそのまた次のクルマへと引き継がれていく。新型RXでいえば、NXの開発で鍛えられたGA-Kプラットフォームの要素を取り入れてさらに改良。またRZの運動性能を支える四輪駆動制御システム「ダイレクト4」を、ハイブリッド車向けに改良して採用するなど、まるで螺旋階段を一段一段登るように進化させながら、オールラインナップの性能底上げを図っているのだ。
こうした開発のあり方は、横との連携なくして進まない。これを象徴するのが、土曜日の下山テストコースで行われる「味磨き活動」だという。ここには、現在進行形で開発を進めている各チームのCEをはじめとして、デザイン部門や製造部門などのトップたちが開発モデルを持ち寄り、乗り比べ、情報交換し、課題解決の一助とするというもの。
新型LXの開発責任者を務めた横尾貴己CEによって表現された「仕事なのか遊びなのかわからない」というそんな雰囲気もまた、良いクルマを作るためのチームワークを育んでいるのではないだろうか。
実は2022年秋発表予定の新型RXですらもレクサスのクルマづくりの完成形ではないという。さらなる進化が近い未来に現れることを予感させるラウンドテーブルだった。(写真:永元秀和)