2009年、997型ポルシェ911ターボがマイナーチェンジを受けて、水平対向6気筒ターボエンジンを全面刷新すると同時に、トランスミッションを5速ティプトロニックATから7速PDKへと大幅な変更が施された。まるでフルモデルチェンジのような技術的変更によって、997型ポルシェ911ターボはどう変わったのか。日本上陸を前にポルトガル・リスボンで行われた国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2009年12月号より)

エンジンブロックをはじめ各部を完全に刷新して3.8Lに排気量アップ

35年の歴史の中で、「全面新規開発エンジンの搭載」が初めて決断された最新の911ターボ。その国際試乗会は、ユーラシア大陸最西端の地として知られるロカ岬にもほど近い、ポルトガルはリスボン近郊を舞台に開催された。

画像: トランスミッションは6速MTを標準に、新たに7速PDKをOP設定。7速PDKにはパドルも装着される。

トランスミッションは6速MTを標準に、新たに7速PDKをOP設定。7速PDKにはパドルも装着される。

通常は一般公道を用いることが多いポルシェの試乗会だが、今回は多くの時間がエストリル・サーキットでの走行や、はるばるシュツットガルトのミュージアムから運ばれてきたヒストリックマシン「935」や「911GT1」のデモンストレーションラン(!)のために費やされた。

かつてはF1が開催され、数週間前には2輪のモトGPが行われたばかりのこのサーキットは、実はポルシェにとっても由緒ある場所。ちょうど25年前にポルシェのTAGターボエンジンを搭載するマシンを駆る、かのニキ・ラウダが初めてF1のタイトルを獲得したのが、このサーキットであるからだ。

LEDテクノロジーを用いて形状もわずかに変更されたテールランプや、ドアミラーがやや大型化された点を除けば、外観はほぼ従来型と同様の最新モデル。そのトピックのハイライトは、もちろんまずは新しい心臓の内容に集中する。

GT2譲りのチューニングメニューを新採用

エンジンブロックをはじめ各部を完全に刷新し、排気量を3.6Lから3.8Lへとアップしたツインターボ付きの新心臓が発するピークパワーとトルクは500psと650Nm。ただし、オプションの「スポーツクロノパッケージ・ターボ」付きでスポーツモードを選択すると、2100〜4000rpmでのアクセル全開操作で最大10秒にわたってオーバーブースト機構が作動し、トルク値は700Nmに達する。

画像: 効率を上げて燃費性能と動力性能を高めると同時に軽量化を図った3.8L直噴ユニット。

効率を上げて燃費性能と動力性能を高めると同時に軽量化を図った3.8L直噴ユニット。

今回の新技術のひとつは、GT2で初採用された「エクスパンションインテークマニホールド」の導入。ただし、GT2の場合と異なるのは、こちらの心臓は直噴のため、点火時期を早めることでさらに効率を向上させるポテンシャルを備える点。GT2とは逆に、このモデルでは従来型より最大過給圧を下げているのも、このあたりの違いに起因するチューニングという。

多くがオプション扱いであるものの、シャシ関係にも興味深い新たなアイテムが多数用意された。その最たるものはスタビリティコントロールシステム「PSM」の拡張機能であるトルクベクタリング「PTV」。

コーナリング中、最高160km/hまでの範囲内で内側後輪に軽いブレーキングを行うことで、外側後輪に伝達するトルクを増大。いわゆるブレーキディファレンシャルと異なるのは内側後輪の空転を察知して介入するわけではない点で、機能作動中も積極的にアクセルペダルを踏み込むことで、限界コーナリング時のアンダーステアの軽減ができるという。

「それだけでニュルブルクリンク北コースのラップタイムを2秒短縮させる効果がある」という「ダイナミック・エンジンマウント・システム」は、構造は同じもののGT3のそれよりはコンフォート重視のセッティングだ。

 

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