細部まで感じられるDSブランドの美学
思えば、シトロエンの上級ブランドとしてスタートした頃の「シトロエンDS」は、ブランド性もそのデザインも、一般的なクルマ好きにはちょっとばかり難解だったかも知れない。ハンドルを握ってみれば乗り味は心地好く、インテリアの仕上がりには心が満たされ、すんなり馴染めたりできれば、スタイリングデザインも感性に根を生やして離れない。
そしてパッと見だけで触れたことがなくても、刺さる人にはストンと刺さる。けれどそれは少数派であり、多くの人にとっては素直に受け入れづらかった。
多くの人は日常的には左脳ベースで暮らすことに慣れきってるわけで、そうなると無意識のうちに、ロジカルで明快な「解」を求めてしまいがちになるものなのだから。頑張ってナンバーワンを目指せという教育を受けてきた人たちに、そんなものより個を重んじたオンリーワンであることの方が遙かに大切なのだと感じてる人たちの感性の結晶を理屈で納得するのはなかなか難しい、という側面もある。
独特のエレガンスは、それだけで十分に魅力的
けれど2015年に独立したブランドとしてシトロエンから枝分かれし、DS7クロスバック、DS3クロスバック、そしてDS9とモデルが進むにつれて、DSオートモビルズは次第に寛容になった。
ブランドとしての矜持をしっかり保ちながら、多くの人に理解しやすいクルマを送り出すようになった。4月最終週のヴェルサイユ郊外で、最新モードの2代目DS4を初めて生で眺めながら、僕はそんなふうに感じていた。
スタイリングデザインというのは優劣ではなく好嫌で判断されるべきところが大きいと思ってるので、普段はあまり触れずに見る人に委ねることが多いのだけれど、あえて個人的な話をするなら、DS4は素直にカッコいいと思う。大胆な直線基調のプレスラインがいくつも複雑に刻まれていて、けれど煩雑さはなく、彫刻的な雰囲気を醸し出している。
発表当初の写真で感じたSUVっぽさは不思議なことにまったく感じられず、最低地上高の高さを除けばプロポーションのいい5ドアハッチバックにしか思えない。エクステリアにもインテリアにも各部に「もしかして気づかない人もいるんじゃないか?」と心配してしまうような繊細にして気品の感じられる装飾も与えられていて、ブランドの美学が細部にまで行き渡ってることが感じられる。
同じセグメントのライバルたちと較べて、明らかに向いてる方向が異なっていることがひと目でわかる。この独特のエレガンスは、それだけで十分に魅力的だと思うのだ。