近年、電動化を推進するBMWだが、BEV、PHEV、ICEとまだその選択肢を残してくれている。そのBMWのICEの代表的なパワートレーンである直列6気筒エンジンを搭載する最新の2シリーズクーペとオープンボディのZ4で、その走りの違いを味わった。(Motor Magazine 2022年8月号より)

期待どおりのフィーリングの秀逸な直列6気筒エンジン

M240iで走り始めるとまず期待どおりに、このブランドが長年「金看板」としてきた、直列6気筒エンジンが発するフィーリングの秀逸さが印象的だ。実はそうした好印象は、変速ショックなどまるで感じさせない一方で、DCTにも負けないタイトな駆動力の伝達感を実現させている8速ATの優れた仕上がりぶりによってより増幅されてもいるのではないか。

画像: M240i。3L直列6気筒ターボエンジンを搭載。387ps、500Nmを発揮し4輪を駆動する。

M240i。3L直列6気筒ターボエンジンを搭載。387ps、500Nmを発揮し4輪を駆動する。

しかし、それにしてもとことん滑らかに吹き上がり、回転の上昇に伴ってダイレクトなパワーの盛り上がり感も味わわせてくれるこのエンジンの仕上がりぶりは、今さらながらやはりただ者ではない、と改めて実感させられるのは事実だ。

そんな動力性能に関する部分であえてネガティブな点を探せば、それはメーターパネル内に指針が左回りで表示をされる異形タコメーターくらい。端的に言ってその表示の読み取り時にはどうしても不自然な印象が伴う。せっかくのピックアップの良さも、その瞬間に左へと振れる指針の動きによって幾ばくか薄められる印象すら抱くのだ。

フロントフードやエンジンキャリアにアルミ材を用いるなどして軽量化への取り組みが伝えられる一方で、ボディサイズの拡大や4輪駆動系の採用などで1.7トン超と、もはや「軽量でコンパクト」とは紹介し難い点は、それも時代の流れと納得をせざるを得ないということか。

それでも、ワインディングロードへと乗り入れると後輪にバイアスの掛かった駆動力が自在なハンドリング感覚へと繋がることを感じるし、4秒台の0→100km/h加速タイムが謳われるその加速力に不満があるはずもない。

19インチのタイヤにスポーツサスペンションを組み合わせたフットワークのテイストはそれなりに硬質。ただし、テスト車がランフラット構造ではないタイヤや電子制御式可変減衰力ダンパーなどを含む「ファストトラックパッケージ」をオプション装着していたこともあってか、実はそれは過去にテストドライブ経験のあった「220iクーペ Mスポーツ」のそれよりは、むしろややマイルドと思える乗り味であることもまた事実だった。

力強さも併せもつ軽やかな走りのテイスト

そんな新しい2シリーズクーペから乗り換えると、同じパワーユニットの持ち主ながら「やっぱりこちらは純粋なスポーツカーだな」とそんな第一印象を受けたのがZ4だ。そう感じたのはまず、すべての動きがより軽やかであったことに由来している。

画像: Z4 。走り出すと純粋スポーツカーだと風とともに感じる。

Z4 。走り出すと純粋スポーツカーだと風とともに感じる。

「超」が付くほど長いノーズに短いデッキというプロポーションが彷彿させるとおりのFRレイアウトの持ち主で、前輪駆動系からは解放されたボディは各部に補強を必要とすることで不利とされるオープンデザインながら、同様のパワートレーンを採用する「クーペ版」たるトヨタ GRスープラよりも50kgほど重いにもかかわらず、それでも1580kgというデータをマークする。

実際、アクセルペダルの踏み込みに対する加速感は明確により軽やかで力強い。とくにスポーツモード選択時にはそうした動力性能の印象を筆頭として、走りのテイストすべてが操作に対してすこぶるゲイン=応答がシャープで高いことが特徴的。

一方、2シリーズクーペ比では270mmも短いホイールベースや剛性感でやや見劣りするボディから揺すられ感がより強く、さらにチョッピーな乗り味は甘んじて受け入れるしかないという印象だ。

ブランドそのものがスポーティなイメージと強く紐づけられるBMWにとって、新しい2シリーズクーペやZ4はまさにそれをわかりやすく表現する存在に違いない。もちろん現在でも、直列6気筒デザインの心臓がそこに大きく貢献していることも言うまでもないだろう。(文:河村康彦/写真:永元秀和)

画像: 個性は違うが、BMWらしい走りの楽しさは変わらない。(写真左:Z4、右:M240i)

個性は違うが、BMWらしい走りの楽しさは変わらない。(写真左:Z4、右:M240i)

BMW M240i xDrive クーペ 主要諸元

●全長×全幅×全高:4560×1825×1405mm
●ホイールベース:2740mm
●車両重量:1710kg
●エンジン:直6DOHCターボ
●総排気量:2997cc
●最高出力:285kW(387ps)/5800rpm
●最大トルク:500Nm/1800-5000rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・52L
●WLTCモード燃費:10.9km/L
●タイヤサイズ:前255/40R19、後255/35R19
●車両価格(税込):758万円

BMW Z4 M40i 主要諸元

●全長×全幅×全高:4335×1865×1305mm
●ホイールベース:2470mm
●車両重量:1580kg
●エンジン:直6DOHCターボ
●総排気量:2997cc
●最高出力:285kW(387ps)/5800rpm
●最大トルク:500Nm/1800-5000rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・52L
●WLTCモード燃費:11.6km/L
●タイヤサイズ:前255/35R19、後275/35R19
●車両価格(税込):893万円

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