全てのデザイン言語が一新された、グランドツアラー
2022年8月15日、米国で開催中の自動車の祭典「モントレー・カー・ウィーク」において、ベントレーの新しいグランドツアラー「ベントレー・マリナー・バトゥール」がワールドプレミアされた。
「バトゥール」という車名は、インドネシア・バリ島のキンタマーニにあるクレーター湖に由来している。美しい水辺にちなんでいるという意味では、ユカタン半島の絶景スポットからつけられたバルケッタデザインのリミテッドモデル「ベントレー・マリナー・バカラル」と同じだ。
一方でバトゥールは、単にバカラルの後継車とか派生車といった位置づけにあるわけではない。生産台数は18台、すべてがすでに予約済みとなっている。販売価格は165万ポンド(日本円でおよそ2億6700万円だった。
ボリューム感あふれる流麗な2ドアクーペフォルムは、ベントレーの新しいデザイン言語を具現化している。2021年からベントレーのデザインディレクターを務めるアンドレアス・ミントによる指揮の下、過去の名作を再解釈し、コントラストを強調したすっきりとした新しいフォルムとして仕上げられた。
この新しいベントレーのデザインDNAは、2025年にベントレーブランドとしては最初に発売される予定のフルバッテリー電気自動車(BEV)の将来的なラインアップを示唆するものでもあるという。
アンドレアス・ミントは、マリナー・バトゥールのデザインについて、「私たちはBentleyのデザイン言語を再検証し、伝統と革新との連続性を維持しながら、重要な要素について大幅に手を加えました」と語る。
「たとえるなら新しいベントレーのデザイン言語は“息を潜めて身構える野獣のいずまい”です。ライオンやトラといった肉食獣が、獲物に襲い掛かろうと身構え、息を詰めている瞬間の緊張感を想像してみてください。静止していても十分に速さが伝わってくる姿勢をイメージしたマリナー・バトゥールのデザインは、パワフルかつスピード感に満ちています」
パーソナライゼーションの自由度は無限大
バトゥールはバカラル同様に、ユーザーの好みや趣向に合わせたパーソナライゼーションのメニューが、豊富に用意されている。というより、1台1台がそれぞれに異なる仕様として製作される、といった方が正しいかもしれない。
なぜならボディ、インテリアに関するすべてのパーツ類のカラーと仕上げをオーナーが指定することが可能で、仕様はまさに無限大の広がりを持っているから。選択できる素材には、自然への負荷が少ない天然由来の繊維複合材料や、生産工程でのCO2排出量が低い皮革、さらには3Dプリントによって成形された18Kゴールドなども含まれる。
バトゥールは、ベントレーを象徴するパワートレーンである6L W12ツインターボエンジンを搭載している。最高出力は740pを超え、最大トルクに至っては1000Nm以上と発表されている。トップパワーは従来比で40psもアップしながら、燃費効率は約25%向上させたという。組み合わされるのは、高効率な8速DCTだ。
世界で最もサスティナブルでありラグジュアリー性を極めたモビリティの提供を目指す「ビヨンド100」戦略のもと、おそらくは最後の「晴れ舞台」となることだろう。その花道を飾るにふさわしく、バトゥールに搭載されるW12ユニットはかつてないほどのパワーとトルクを発生させるために、さまざまな改良が施された。
吸排気系やインタークーラーを始めとする冷却系は新調、ターボチャージャーもグレードアップが図られている。エキゾースト部のフィニッシャーは、初めて3Dプリントの手法でチタン素材を使って形作られている。
さらにダイナミックな走行ポテンシャルがもたらす究極のグランドツーリング体験を、eLSD、4輪操舵システム、48V電制御アクティブアンチロールバー、トルクベクタリング技術など、ベントレー史上最も先進的なシャシーシステムが支える。標準装着されるタイヤは22インチのピレリだ。
ベントレー・マリナー・バトゥールは、2023年中盤から納車が始まる。その姿を日本の公道で見つけることができるかどうかは、神のみぞ知る。