パワーソースは6.5L V12エンジン+MHEV
ランボルギーニ社がカウンタックを復活させた理由は日本でスーパーカーブームのシンボルとなったからではない。同社にとって非常に重要なモデルだったからだ。
カウンタックは1966年から発売していたミウラの後継モデルとして開発がすすめられ、生産販売を72年5月に決定した。その後、ランボルギーニ社は幾多の経営難に遭遇したがカウンタックは90年まで生き延び、およそ2000台が出荷されたのである。
このスーパースポーツカーとしては異例の生産台数と長寿が日本にも輸出された要因でもあった。そしてカウンタックのV12縦置きエンジン、そして前衛的なデザインはランボルギーニのDNAとして、その後に登場してきたモデルに受け継がれているのである。
この復活したカウンタックの試乗会がランボルギーニ本社のある北イタリアのサンタアガタで開催された。生産台数わずか112台ゆえに我々の前に現れたのはわずか1台で、試乗に限られた時間は初めは2時間だったが、私たちは日独をカバーするメディアとして特別に4時間が与えられた。
インパクトホワイトのニューカウンタックのボディサイズは全長4.87m、全幅2.1m、全高1.14mで半世紀前のオリジナルモデルよりも7.3cm長く、7cm高い。
閉塞感のないインテリアや確保された後方視界が「今ふう」
ステファン・ヴィンケルマン社長は「単なるレトロではなく、将来のデザイン方向性を見据えた新提案である」と主張するが、前方に鋏のように跳ね上がるシザードア、フロントウインドウの切り抜き、六角形ホイールオープニングとテレフォンダイアルホイール、そしてNACAダクトなどのデザインアイコンが残されている。
しかし風洞で鍛え上げられたワンモーションウエッジのスムーズなサーフェスを持ったボディにはさすがに時代の隔たりを感じる。当時「カウンタックアクロバット」と揶揄された乗降性は、高くなったルーフと低く細いサイドシルのお陰で大きく改善されている。
室内は大人ふたり分の必要にして十分な空間だが、ルーフは比較的低いが透明度の変わる液晶ガラスで圧迫感はなく、後方視界も何とか確保されている。
真っ赤なカバーのスタートボタンを押すと6.5L V12エンジンが目覚める。パワートレーンは基本的に19年にわずか63台のクーペと19台のロードスターが販売された「シアン」と共通のMHEVが搭載され、スーパーキャパシタによって駆動される34psの電気モーターが組み合わせられる。
このシステムは軽量で作動が素早く、ICEをアシストする。システム出力814ps、最大トルク720Nmを発生、組み合わされるトランスミッションは速AMTで、シングルクラッチながらDCTよりも素早く快適なシフトワークを提供する。
112台の限定台数はすぐに完売してしまった
カタログ上の性能は0→100km/h加速が2.8秒、200km/h加速は8.6秒、最高速度は355km/hである。最大トルクを6750rpmで発生し、高回転型で澄んだエキゾーストサウンドが響き渡る。アウトストラーダの入り口からフル加速を試みた。
トルクの盛り上がりと息の長い加速はBEVスポーツカーでは体験できない魅力だ。可変ステアリングは軽めで正確、4WSの助けもあり車重1.6トン、2.7mのホイールベースにもかかわらず敏捷なハンドリングを可能にしている。
乗り心地は、スーパースポーツらしく硬めだが、シャシは決して不快な突き上げを乗員に伝えず、GTカーとしての快適性は十分に保たれている。タイヤのグリップは強大でタイトなコーナーはもちろんヘアピンでも狙ったラインをトレースすることができた。
カウンタックは240万ユーロ(約3億4000万円)と想像を超える価格にもかかわらず、21年ペブルビーチで公開された直後に限定生産台数112台が完売した。日本への割り当てもあり、先日一台が上陸したが、それ以外の正確な台数は知らされていない。(文:TG<キムラ・オフィス>/写真:ランボルギーニS.p.A.)
ランボルギーニ カウンタック LPI 800-4主要諸元
●全長×全幅×全高:4870×2099×1139mm
●ホイールベース:2700mm
●乾燥重量:1595kg
●原動機種類:V12DOHC
●総排気量:6498cc
●最高出力:574kW(780ps)/8500rpm
●最大トルク:720Nm/6750rpm
●トランスミッション:7速AMT
●駆動方式:4WD