スズキのハイト軽ワゴン、スペーシア シリーズに新たに追加されたのは、4ナンバー(バン)の「スペーシアBASE」だった。その登場のいきさつと、最近の軽自動車市場について考えてみたい。

パーソナルユース化が進む軽ハイトワゴン&キャブバン

2021年にスズキが販売した軽自動車は、およそ50万台。そのうち、スペーシアなどのハイトワゴン、ジムニーやハスラーなどのSUV、そしてエブリィなどのバン/トラックがだいたい4分の1ずつを占め、残りの4分の1をアルトなどのセダンとワゴンRなどのワゴンがほぼ半々(少しワゴンが多い)、といった割合だ。

画像: コマーシャルユースだけでなく、レジャーユースも想定した軽バンとして2018年に登場したホンダ N-VAN。

コマーシャルユースだけでなく、レジャーユースも想定した軽バンとして2018年に登場したホンダ N-VAN。

バンとトラックでは、バンのほうがトラックより少し多いといった割合だが、スズキのバンでは仕事専用のエブリイと遊び寄りのエブリイワゴンはあるが、その中間的なクルマがなかった。また、ハイトワゴンでは日常的なスペーシアとアウトドアレジャー寄りのスペーシアギアがあるが、これもその中間的なクルマがなかった。

さらに、軽自動車ではキャブバンもハイトワゴンもパーソナルユース化が進んでいるという背景がある。スライドドアを備えてリアシートの使い勝手が高いはずなのに、最近では4名乗車の割合はワゴンでやっと4割、キャブバンだと3割以下になるという。

そこで、少人数&多目的利用を新たな需要減として着目し、遊びも仕事も日常使いにも、ヒトもモノも重視した軽バンを、という発想でスペーシアBASEが生まれたというわけだ。

企画が立ち上がったのは2019年ごろ。現行のスペーシア シリーズが登場したのが2017年末。コマーシャルユースだけでなく、レジャーユースも想定した軽バンとしてホンダのN-VANが登場したのが2018年だから、この成功を意識したことも間違いないだろう。

最大積載量は200kgを確保。荷室長は1200mmを超える

だが、スズキでは専用ボディにはせず、スペーシア、それもカスタムを車名どおり「ベース」にした。それには、乗用車のデザインで商用車的な雰囲気を払拭したかったことや、乗用車譲りの快適性や運転のしやすさを盛り込みたかったのだろう。

画像: 4ナンバー化されても、インテリアは5ナンバーのスペーシア シリーズと変わらない。安全&快適装備も充実している。

4ナンバー化されても、インテリアは5ナンバーのスペーシア シリーズと変わらない。安全&快適装備も充実している。

したがって、軽バンは法規上350kgまでの積載量が認められているが、スペーシアBASEは200kgとしている。これは、乗用車として作られたシャシや足まわりを必要以上に変更しなくて済む数値であり、またレジャーなどで使うなら、200kgあれば十分だろうという考えでもある。

ところで、4ナンバー軽自動車では、開口部の縦と横の長さが800mm以上、荷室の床面積が0.6平方メートル以上、そしてリアシートを起こした状態でラゲッジスペースはリアシートのスペースより広くなければならない、などといった基準がある。

そのため、スペーシアBASE専用に作られたリアシートは、公園のベンチにクッションを張った程度のものとなる。もっとも、これは他の軽バンでも変わらない。そのかわり、荷室長は1205mm、荷室床面幅は1245mm、荷室高は1220mm(いずれも2名乗車時)という、軽自動車としては十分に広いラゲッジスペースを手に入れた。

そして、最大のセールスポイントは標準装備のマルチボードだ。ラゲッジスペースに3段階の高さでセットでき、たたんだリアシートと組み合わせて、モバイルオフィスや移動販売など、さまざまな使い方ができる。フロントシートを倒してフラットにすれば、車中泊も可能だ。

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