同門であるプジョーともテイストの違いは明確
「明るい陽光を求めて」とも言えるイタリアでの国際試乗会でテストドライブを行ったのは、BMWとの共同開発で生まれた1.6Lで120psを発揮するエンジンを搭載するモデル。現地に用意されていたのは5速MT仕様に限られたが、日本にはトルコンATとの組み合わせで導入されるという。ただし、それが4速仕様というのはこの期に及んで残念なポイント。5速でも100km/hクルージング時に2900rpmに達するエンジン回転数は、さらに高まってしまいそうだ。
走りの面で感心したのは、実はそんなパワーパックが生み出す動力性能ではなく、路面への当たりがフンワリと優しく、しかし非凡なライントレース性や安定感を味わわせてくれたフットワーク。兄弟ブランドのプジョー車がこのところ妙に突っ張り気味な足まわりの仕上がりを示す場合が多いのに対し、いわゆる「フランス車らしさ」を色濃く味わえるのは圧倒的にこちらの方。と同時に、静粛性でも褒めるべきポイントが多々感じられるのがこのモデルだ。こうして、同じカテゴリーに属するモデルでもブランドの違いで想像以上に大きなテイストの差が実感できるのは、PSAのグループ戦略の成せる技だろうか。
ところで、そんなC3のラインナップには、モノスペースカーである「ピカソ」も存在する。こちらはパリのシトロエン本社で1.4Lの5速MTモデルを借り出してのテストドライブとなったが、その仕上がりはやはり非凡なものであった。通常のAピラーに加えて「サブAピラー」との間に異型の3角窓が存在するが、それも含んだ視界の広がり感が圧倒的。前方Aピラーが生み出す死角はほとんど気にならず、ベルトラインと相まって全方位への見晴らし感が抜群だ。
正直、加速の能力には時に物足りなさを覚える場面もあったが、こちらもまたフンワリと優しい乗り味と期待を上回る静粛性の高さが感動モノ。リアシートをアレンジすれば商用バンばりの積載スペースを生み出せる一方、4078×1730mmという「日本にもジャスト」なボディサイズが、入り組んだパリの裏道でも威力を発揮してくれた。
ただし、何とも惜しいのは、このモデルには現在のところ、日本導入の予定が立たないということ。どうやらATの設定がないことに起因するようだが、そんなポイントを上陸への障壁にしてしまう日本固有のAT免許制度の存在が何とも恨めしい。(文:河村康彦)
■シトロエンC3 VTi 120 主要諸元
●全長×全幅×全高:3944×1708×1514mm
●ホイールベース:2456mm
●車両重量:1075kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:1598cc
●最高出力:120ps/6000rpm
●最大トルク:160Nm/4200rpm
●トランスミッション:5速MT
●駆動方式:FF
●タイヤサイズ:195/55R16
※EU準拠