アウディはGTからSUVまでBEVのe-tronのラインナップ拡充を図っている中、e-tron初となるSモデル「e-tron S スポーツバック」が登場した。そのハイパフォーマンスバージョンのBEVの走りとはどのようなものか、試乗することができた。(Motor Magazine 2022年10月号より)

クワトロシステムにトルクベクタリング機構を搭載

2018年9月にワールドプレミア、2020年にはファーストエディションが日本上陸を果たしたアウディeトロン/eトロン スポーツバック。既存のMLB Evoと呼ばれるプラットフォームはエンジン車のQ5などと同様ではあるが、最初から電動化を見据えた設計となっているためBEVでもそのデビュー時から高い完成度を見せていた。

ファーストエディションはクワトロで最高出力300kW(408ps)、最大トルク664Nmと強力で、トルクが立ち上がるまでわずか0.03秒というモーターの特性を存分に発揮した鋭い加速に目を見張ったものだ。バッテリー容量も95kWhと最大級で一充電走行距離は405km。BEVとしては足の長い方だ。

その後、クワトロが追加された。前後2基のモーターの搭載は同じだが、最高出力は230kW(313ps)、最大トルクは540Nmと控えめに、バッテリーも71kWh、一充電走行距離は316kmと減少した。ただし、ファーストエディションが1327万円だったのに対して933万円と、ぐっと身近になった。

今回追加されたeトロン S/eトロン S スポーツバックは、パフォーマンス重視のモデルであり、「S」というアルファベットが付くだけということから想像するよりも進化幅は大きい。なんと言っても、まだ珍しいモーターのBEVなのだ。

画像: クーペのようなスタイリングのe-tron S スポーツバック。ベースモデルに比べ全幅は50mm拡大されている。

クーペのようなスタイリングのe-tron S スポーツバック。ベースモデルに比べ全幅は50mm拡大されている。

フロントに150kW(204ps)のモーターを基搭載するのはクワトロと同様だが、リアは132kW(180ps)のモーターを2基搭載。システムトータルでは最高出力370kW(503ps)、最大トルク973Nmとなり、0→100km/h加速は4.5秒にまで短縮された。バッテリー容量はクワトロと同様の95kWhで一充電走行距離は415kmと、パフォーマンスが上がっているのに伸長している。

55クワトロも通常はリアモーターで駆動しつつ状況に応じてフロントにも駆動を配分していくシステムだったが、eトロン Sでも通常はリアの2基のモーターが駆動しているのは同様。違いはリアモーターが左右それぞれに駆動力の伝達が可能で、旋回性能や安定性を大いに高めていること。いわゆるトルクベクタリング効果を自由自在に司れるわけだ。

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