いまや軽乗用車の半分近くがスーパーハイト系
全高が1800mm近くあり、リアサイドドアにスライドドアを採用したワゴンタイプの軽自動車を総称して「スーパーハイト系」と呼ぶ。そのルーツは、2003年に登場した初代タントだ。以来、スズキ パレット(現在はスペーシアに世代交代)、ホンダ N-BOX、三菱 eKスペース & eKクロススペース、日産 デイズルークス(現行型はルークス)と、各メーカーはスーパーハイト系をラインナップする。
軽乗用車の市場ではスーパーハイト系の構成比率が高まり、2003年のタント登場時は1%(月販600台)だったのが、2012年には31%(月販4万1000台)、そして2018年には45%(月販5万5000台)にまで拡大した。2021年はコロナ禍の影響もあり月販台数は4万7000台に減少したが、構成比は45%と変わらない。いまや、軽乗用車の半分近くはスーパーハイト系が占めているというわけだ。
そんなスーパーハイト系の軽乗用車市場に、いや自動車市場の全体に「絶対王者」として君臨しているのが、ホンダのスーパーハイト系「N-BOX」だ。2011年の初代登場以来、2022年の現在までに軽四輪車はもちろん、登録車も含めた四輪車販売台数で、何度も年間および年度の販売台数第1位を記録している。
2022年も1〜9月で、N-BOXは15万1594台でダントツの首位、2位はスズキ スペーシアで7万1530台、3位がタントで6万5671台。これは軽乗用車のみの順位だが、数値こそ違うが順位は2021年と同じだ。そこで、スズキはユーザー層を拡大してライバルを凌駕すべく、2022年8月にスペーシアに「仕事にも趣味にも使える」4ナンバーのスペーシアBASEを設定した。
今回、ダイハツはタントのマイナーチェンジで、新たなバリエーションを「新時代のアウトドアモデル」としてファンクロスを登場させ、その販売数拡大を図る。標準車のタントは外観を変更せず、「親しみやすい、シンプル」というイメージを継続させている。
フロントまわりを一新したタントカスタム
まずはタントカスタムから。フロントまわりはフード、フェンダー、バンパー、そしてランプまで変更し、上質で迫力あるスタイルに進化させた。マイナーチェンジのレベルとしては、かなりコストをかけている。ダイハツは、たとえば新型ダイハツ ムーヴキャンバスでは同じパーツを使いながらストライプスとセオリーを作り分けたりと、コストをかけずにうまいクルマ作りをするのだが、今回は、かなり気合いが入っている証拠なのだろう。
インテリアはシリーズ全体で質感が高められている。タント自慢の広い室内空間やミラクルオープンドアをはじめ、利便性や解放感はそのままに、ラゲッジスペースではデッキボードをタント シリーズの全車に標準装備したり、荷室側からリアシートをスライドできるなど、使い勝手を向上している。
限られた室内空間を縦方向に有効活用するデッキボードは、ラゲッジスペースを2段で活用できたり、リアシートバックを倒せばフラットなスペースを作れたり、またアウトドアではテーブルにもなるなど、なかなかの優れものだ。
ファンクロスは、タントカスタムをベースに、グリルやヘッドランプ、バンパーなどは専用パーツを採用し、ルーフレールやロッカーモール、幅広のサイドモールなどがクロスオーバーテイストを演出している。インテリアもオレンジ色のアクセントやタフトと似た(同じではない)カモフラージュ柄のシート、撥水加工のシート表皮や防水加工のシートバックを採用し、アウトドアで活躍できそうだ。
ファンクロスには、ルーツ的なモデルがある。2020年の東京オートサロンに出展されたて注目を浴びたカスタマイズモデル「タント クロスフィールドバージョン」だ。この好評ぶりからタントの商品展開を拡大し、タントだからできることも拡大しようと、ファンクロスを登場させるきっかけになった。