細部でプレミアム感を主張するコーディネイト
日本人にとっては「ラングラー」とともに「Jeep」のブランドイメージを代表するモデルだった「チェロキー」が、日本向けの生産を終了したのは2021年末のこと。新型「コマンダー」はそれに代わわる「コンパス」と「グランドチェロキー」の間を埋めるモデルとして、日本への導入が開始された。グレードは「リミテッド」のみ。パワートレーンも、2L 直4ディーゼルターボと9速AT、4輪駆動オンリーの設定となる。
もともと新しいコマンダーは、南米ブラジルでコンパスをベースに、より上級なモデルとして企画・開発されたモデルだ。ブラジル市場ではレネゲード、コンパスで展開を図ったジープブランドだったが、SUV市場では20%以上のシェアを獲得、「絶対的な成功」(2021年8月に出されたコマンダー発表時のリリースによれば)を収めることができたという。
横置きエンジンFWDレイアウトのシャシなど基本メカニズムはコンパスと共通化されているものの、ルックスはより上級の「グランドチェロキーL」からイメージを受け継いでいる。ステップアップの先にあるモデルらしい上級感を巧みに盛りこむことも忘れてはいない。
ジープの伝統を物語るフロントグリルの7つのスロットは、クロームアクセント付グロスブラック仕様にアレンジされている。ヘッドランプの形状やフロントグリルバンパーまわりの風格は、堂々たるものだ。水平方向に薄く広がるガーニッシュと「プレミアム」を謳うテールランプのコンビは、「ジープ ワゴニア」からの継承。堅牢さと洗練された雰囲気のバランスが絶妙だ。
インテリアのレイアウトは基本、コンパスの上級グレードである「リミテッド」に準じたものとなる。一方で、光沢のあるステッチを配したり、レザー使いなどにもより上質感が感じられるように思えた。10.1インチタッチパネルモニターを中心とするインフォテインメントやヒーテッドステアリング、ハンズフリーパワーゲートといった装備は標準、機能的にはとても充実している。
エマージェンシーではなく「使える」3列目シート
弟分のコンパスに対するコマンダーならではのもっともわかりやすい差別化と言えばやはり、拡大された全長とともに3列7人乗りとなったシートレイアウトだろう。全長は4770mmあり、コンパス比で350mm伸ばされた。全幅は+50mmの1860mm、全高は90mmほど高い1730mmとなっている。前後方向の伸びやかさだけでなく、トータルでのボリューム感が醸し出す存在感はとても力強い。
もっとも実際に運転していると、数字の差ほどに取り回しに苦労する感覚はあまりない。ホイールベースの延長分は145mmで、装着されているタイヤのサイズは1インチワイドではあるが、18インチのまま(235/55R18)だ。最小回転半径はコンパスより0.1mだけ大きな5.8mと、クラス的には常識的な範囲に収まっている。
やや長めのホイールベースは、比較的落ち着き感のある直進性など、メリットの方が際立っているように思えた。前後のサスペンションは、サイズと重量のアップに合わせて最適にチューニングされているという。NVHに関してはとりわけ洗練されている印象ではなかったけれど、不快感を伴うことはない。
それにしてもこのクラスのSUVで、エマージェンシーではなくかなり使える7人乗りを実現しているのは、大したものだ。輸入車の3列シートミニバンとしてはプジョー5008やメルセデス・ベンツGLBなどが思い浮かぶが、それらよりも130mmほど長い全長が効いているのだろうか。
しかも全席リクライニングが可能で、2列目シートは最大140mmの前後スライド幅を持つ。リアドアは最大80度のゆとりある開口部を確保しているので、乗り降りも比較的楽にこなせるのが嬉しい。ちなみにフル乗車時のトランクスペースは233L、5人乗りで661L、最大で1760Lと公表されている(ブラジル仕様の数値)。