高速道路保全事業の高度化技術を幅広く紹介
NEXCO中日本では、最先端のICT(インフォメーション & コミュニケーション テクノロジー)技術やロボティクス技術の導入により、道路環境の激変に対応しつつ、高速道路モビリティの進化に貢献する革新的なプロジェクトとして「i ムーブメント」を推進している。
今回、このi ムーブメントに関連する各種の最新技術や製品などが「ショーケース」としてメディアに向けて公開された。ここでは、Webモーターマガジン読者諸氏にも興味深い「はたらくクルマ」を中心に、そんな最新技術を紹介したい。
路面性状測定車(ロードタイガー)
最高速度100km/hまで任意の速度で走りながら、舗装路面の「平坦性」「ひび割れ」「わだち掘れ」の3要素を測定できる。1984年に初代が誕生し、現在は展示車の5号車と6号車が活動中。かつては人力作業で1日数kmしか点検できなかったが、いまでは1日300〜400km以上もの路面性状調査が可能になった。
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車体前部から赤外線レーザー光を発射し、上方のボックスに備わるラインセンサカメラで読み取る。
橋梁伸縮装置点検車(ロードキャット)
80km/hで走行しながら橋梁伸縮装置の直上通過時の音や振動を小型マイクロホンと振動センサーで測定し、健常時データとの比較により健全度の評価を可能にする。従来はクルマから降りて点検員の目と耳で確認していたが、ロードキャットでは走行しながら器械で計測するので、作業の安全性向上や省力化が図れる。
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見た目は普通のワンボックス。測定システムは他のクルマにも積み替えが可能だ。
施設構造物変状検知システム(DSCV)
施設構造物(主にトンネルなど)を対象に、100km/hで走行しながら8Kカラーラインカメラによる高精細画像を取得し、撮像した対象設備の写真をAI処理により過去のデータとの比較などから統一的な基準による点検結果の判定を可能として、作業の高度化・効率化を目的とするシステム。ベース車はいすゞ フォワードで、エアサスによる安定した走行で点検がしやすいという。
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車体の後部に4台の8Kカラーラインカメラを搭載している。
新型路面清掃車
高速道路の路肩やガードレール脇に落ちているペットボトルなどのゴミを、路肩を走行しながら発見する都度徐行または停止し、車両前面の吸引装置でゴミの回収を可能とする。作業員が道路上に降りる回数を削減でき、作業の省力化や安全性向上が図れる。車両はドイツ ハコ社のマルチカーをベースにオーストリア製の吸い込み装置などを日本の飛鳥特装で装着したもの。ちなみにエンジンはフィアット製の3L 直4ディーゼルターボだ。
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吸引装置を備えるため、ナンバープレートやヘッドランプはクルマの上部に装着されている。
AI画像処理搭載巡回車
高速道路でよく見かける維持管理車両に、全方向への高画質カメラ、振動検知センサー、音声収集センサー、路面状態検知センサーを搭載し、収集した各種センシング情報を基に教師データを蓄積して各種解析を行い、路面変状などの検出を可能にする。専門点検員なしに路面変状などの早期発見&補修が可能になり、安全性や生産性の向上が図れる。2024年度の実用化を目指して開発中。
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見かけは普通の巡回車だが、全周囲にカメラやセンサーを備えている。
小径管点検ロボット(P-CIS)
人が入ることが不可能な小口径(直径800mm以下)のパイプカルバート(水路や渓流など高速道路の隣接地域の排水を処理するため本線下に埋設される横断排水施設)内の点検を可能にする。前方に360度カメラ、後方に詳細カメラを搭載し、有線操作(万が一のときに引っ張って回収できる)で近接目視と同程度の効果が得られ、時間の短縮や効率アップが図れる。
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人が入れない小口径管内部の点検に威力を発揮する。システムの基本は電動RCカーがベースだ。