趣味の良さを感じさせる内外装
2013年から市場に提供されているレンジローバースポーツが10年目を迎えてフルモデルチェンジを行った。ランドローバーらしい長いスパンで登場した3世代目にあたるニューレンジローバースポーツの試乗会はその車格に相応しくフランクフルト北方、タウヌス山脈の麓にある高級リゾート、クロンベルクで開催された。
この新型には、出力の違う2種類のプラグインハイブリッドと2種類のガソリン、3種類のディーゼルという合計7種類のパワートレーンが用意されている。今回試乗したのは530psのV8エンジンを搭載したトップバージョンのP530である。
一新されたエクステリアデザインは端正でシンプル、どこから見てもランドローバーである。とくに昨今ドイツ勢が中国市場を意識して巨大なグリルや抑揚の大きなサイドパネル、そしてバロックともいえるリアのフィニッシュを与えているのに対して己の行く道を追求、趣味の良さを貫いているのは清々しいほどである。
さらにランドローバーファミリーであっても極端な近似性を持たずにある程度の個性を持たせているのも好感が持てる。たとえばこのスポーツではフロントではランドローバー家の血筋を、そしてリアには独立した個性が与えられている。
インテリアもレンジローバーに見られるようにエクステリア同様に控えめで、中央のタッチ機能付きモニターも邪魔にならないサイズだ。シートや内張りなどのトリム材料、仕上げはもちろん第一級で、ジェームズ・ボンドのオーダーメードスーツを思い起こさせる。
プラットフォームはMLA(縦置きエンジン レイアウト アーキテクチャー)が採用されているが、ボディ剛性は旧モデルよりも35%アップしている。またそれによりリアコンパートメントも広くなり、旧モデルと比べると膝の部分では31mmスペースが増えた。
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優れたシャシと先進技術で走りと快適性を高次元で両立
搭載するパワートレーンは、22年まで続いていた現行モデルの5L V8コンプレッサーから4.1L V8ツインターボに変わった。このエンジンは自社製でなくBMWから供給されているものでM850iに搭載されているN63型である。もちろん採用に際してはエンジンルーム形状に合わせてオイルパンなどのモディファイは行われているがスペックを見る限りでは出力、トルク値はそれぞれ390kW(530ps)、750Nmと変化はない。
ただしこのエンジンの特性はコンプレッサーのように低回転域から下からグワッとトルクが盛り上がるタイプではなく、850iで経験したようなアクセルペダルに敏感なスポーツタイプでもない。しかし、右足を踏み込んだだけ十分なパワーが淀みなく沸き上がり、使いやすい実用性重視のパワープラントである。
まるで箱根のようなコーナーとアップダウンが続くタウヌスの峠道を走り出すと、まず感じるのは確かに剛性アップされたボディがもたらすガッチリした感触を伝える足まわりで、ステアリングホイールを大きく切り込んでも遅れなくスパッと姿勢を変える。
さらに新たに採用された最大切れ角7.3度の後輪操舵と電子制御のロールスタビライザーによって敏捷性と安定性の高いハンドリングが得られている。一方でドライブ状況やナビのデータを取り入れているダイナミックエアサスペンションはハイエンドSUVらしい快適性を提供してくれていた。
最後にドイツプレミアムブランド勢が一気にチャイニフィケーション(中国市場傾倒)に走り、すべてが過剰になっている中で控えめなブリティッシュネスを貫いている姿勢には拍手喝采である。
ドイツにおける価格はベースモデルが19%の付加価値税込みで9万3000ユーロ(約1360万円)からとなる。日本でもすでにディーゼルモデルの受注を開始しているが、今後、ガソリンモデルやプラグインハイブリッドモデルの導入が期待される。(文:木村好宏/写真:ジャガー・ランドローバー)
ランドローバー レンジローバースポーツ オートバイオグラフィー P530主要諸元
●全長×全幅×全高:4946×2047×1820mm
●ホイールベース:2997mm
●車両重量:2505kg(EU準拠)
●エンジン:V8DOHCツインターボ
●総排気量:4395cc
●最高出力:390kW(530ps)/5500-6000rpm
●最大トルク:750Nm/1800-4600rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・90L
●WLTCモード燃費:8.9km/L
●タイヤサイズ:285/45R23