さまざまな確認と写真撮影、時には立会人の確保まで必要になる
EDRデータの読み出し作業はまず、事故車両の「身分証明書」とでもいうべき、ナンバーや型式、車台番号を確認、写真として記録することから始まる。いわば、対象の存在を明確化する作業だ。次にホイールやタイヤのサイズ、空気圧や残溝の状態などを確認することで、違法なカスタマイズが行われていないか、適正な走行コンディションが保たれていたかどうか、を判断する参考とする。続く警告灯の点灯有無もまた、異常の有無を判断する助けとなる。
実際にEDRデータを読みだす際には、PCの時刻合わせも徹底しなければ、後々の証拠としての真正性を保つことはできない。理想としては専用のスキャンツールによって、電気系デバイス類の診断も行いたいところだ。この時、作業の様子を写真に撮っておくのは、EDRデータが真に事故車両から抜き出されたものであることを証明するために他ならない。
さらに物理的な証拠も、しっかり残しておく。車両全体、破損部位、内装(とくにエアバッグやシートベルトプリテンショナーなど、事故時の乗員保護システムの展開の有無を示す状態)を撮影、記録することは不可欠だ。ポイントとしてはこれらの作業を行う際に、作業場所を明確にすることや、現場で立会人となりうる第三者に適正さを証明してもらうためのサインや写真を残すことも必要になりうる。
加えて、損傷部位をメジャーやバランスゲージといった専用ツールを使って計測し、変形の度合いを記録として残しておくことも、後々のトラブルを収める重要なファクターとなる。とくに保険を使う際の修理額の算定にEDRの記録と合わせて使うと、ユーザー側にとっても「納得感」がかなり違ってくることだろう。
こうした作業は、これまで損害保険会社のアジャスターなどが取り組みの初期段階で行ってきた手法とある程度、共通している部分もある。従来からのさまざまな情報収集とEDRの記録をもとにしたCDRレポートを併用することで、それぞれの信頼性や証拠としての価値が一気に高まるだろう。
いわば「お仕事として」のCDRテクニシャンとはCDRアナリストとともに、ADASや自動運転の普及などの自動車技術の革新に合わせて求められる、新しい時代のアジャスター的役割の一端を担うものだと考えていいかもしれない。実際にCDRレポートの分析を行うCDRアナリストの活動を強力にサポートする存在として、高い作業精度を求められるCDRテクニシャンとしての資格は、ますますその重要性が高まることになりそうだ。(画像提供:ボッシュ株式会社/日本自動車車体補修協会JARWA)