新型RXやBEVのRZなどSUVを中心に着々と電動化を進めているレクサスが、スポーツセダンのISに自然吸気の5L V8エンジンを搭載する「IS500」を導入した。大排気量の溢れるパワーと官能的なサウンドを堪能できるクルマはこれが最後になるのだろうか。(Motor Magazine2023年1月号より)

期待を大きく超える乗り味を実感

レクサスがISシリーズに5L V8エンジンを搭載したIS500 Fスポーツ パフォーマンス(以下IS500)を追加すると聞いたときは、耳を疑った。世界的にどの自動車メーカーから発信されるのも電動化関連の話題が中心で、純粋なエンジン車の新規投入などほとんど聞こえてこないからだ。

画像: 2UR-GSE型5L V8DOHCエンジンは7100rpmで最高出力481psを発生する高回転型ユニットだ。

2UR-GSE型5L V8DOHCエンジンは7100rpmで最高出力481psを発生する高回転型ユニットだ。

電動化モデルが新車の中心になっている今、IS500という存在は、これほど嬉しいものはないニュースである。これはレクサスの英断といえる。

振り返れば、IS500と同じV8エンジン搭載のLC500に乗った時は、この素晴らしいエンジンを味わうのは、これで最後かもしれないと覚悟していた。それがISに積まれたのだから、朗報以外の何ものでもない。これはすべての予定に優先して乗るしかないと考え、今回のテストドライブとなったわけである。

試乗モデルは、500台限定のIS500 Fスポーツ パフォーマンス ファーストエディション。すでに完売だというのでこの登場を待ち望んでいた人が多かったということだ。ファーストエディションは無理だが、IS500はカタログモデルとなるので、まだ購入のチャンスは残されている。

さて実際に試乗してみるとこれが「最高」だった。まったく期待を裏切らない。いや、期待を大きく超えるものだった。心の中では、今度こそこの5L V8エンジンに乗るのは最後かも知れないと思いつつ、この時間が少しでも長く続いてほしいと願っていた。

現在、買える純粋な内燃エンジン、つまり電動化されていないV8モデルは超稀少である。国産車
では前述したレクサスLC500、レクサスRCFしかない。輸入車にはまだあるが、それでもそれらはすべてスーパーカーと呼ばれるクルマたちである。そう考えるとIS500もその仲間入りをしていると言えるだろう。

そう、あのISFの再来とも言えるスーパーモデル的な存在だ。

レクサスの5L V8エンジンはとても官能的な音を奏でる

さて、そんなIS500は、2UR-GSE型V8自然吸気エンジンから最高出力481ps、最大トルク535Nmを発生する。走りは、大排気量、マルチシリンダー、自然吸気らしい力感に溢れストレスなく一気に高回転まで吹け上がり、官能的なエキゾーストノートを奏でるIS500は、実に気持ちがいい。さらに後輪駆動というのもこの痛快な走りにひと役買っていると言える。

画像: ボディカラーはチタニウムカーバイドグレー。外観ではマットブラックのホイールとブラックのドアミラーがファーストエディションの証となる。

ボディカラーはチタニウムカーバイドグレー。外観ではマットブラックのホイールとブラックのドアミラーがファーストエディションの証となる。

デザインを見ると圧倒的な存在感がある。とくにリアは、4連マフラーやリアバンパーロアガーニッシュがひと目でただ者ではない雰囲気を醸し出している。

インテリアも専用メーターやスポーツシート、ウルトラスエード素材の採用などに加え、始動時のオープニングも作り込まれ、座った瞬間から気分は高揚する。

走りを支える足まわりは、Fスポーツ パフォーマンス専用にチューニングされたパフォーマンスダンパーを前後に装備、これによりハンドリング特性がシャープになっている。さらに、バネやスタビライザー、ESPなども専用チューニングされている。

タイヤはフロント235/40R19、リア265/35R19の前後異サイズ、ブラックに塗られ19インチ鍛造アルミホイールを装着し、ブレーキはフロント356mm、リア323mmのブレーキディスクローターを採用、LEXUSのロゴが入ったブラックのブレーキキャリパーも標準装備する。

レクサスは、このIS500で走りを鍛え上げ、電動化モデルにそれをフィードバックするという。つまり、純粋なICEであるが、そこで鍛え上げた走りのテイストは、RZのような電動化モデルの走りにも繋がっているのだ。

IS500は、「クルマ好きが求めるニーズや期待に応える」というレクサスの基本的な考え方が生み出したモデルである。できる限り長く作り続けて欲しい。(文:Motor Magazine編集部 千葉知充/写真:永元秀和)

■レクサスIS500 Fスポーツ パフォーマンス ファーストエディション主要諸元

●全長×全幅×全高:4760×1840×1435mm
●ホイールベース:2800mm
●車両重量:1720kg
●エンジン:V8DOHC
●総排気量:4968cc
●最高出力:354kW(481ps)/7100rpm
●最大トルク:535Nm/4800rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:FR
●燃料・タンク容量:プレミアム・66L
●WLTCモード燃費:9.0km/L
●タイヤサイズ:前235/40R19、後265/35R19
●車両価格(税込):900万円

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