「よりお得に」手に入れたいと思うのは当たり前だけど・・・
さまざまな業態で普及し始めた「サブスクリプションサービス」は、これまでの「物を買う(あるいはサービスを利用する)ために直接対価を払う」という常識から「物(あるいはサービス)を使う期間に対価を払う」ことで、お得感を生み出すことを狙ったシステムだ。
もっとも身近でわかりやすいのは、音楽や動画のサブスク配信だろう。これは楽曲のひとつひとつにお金を払うのではなく、複数コンテンツが配信されるサービスを一定期間利用する権利を購入する。イメージ的には定額で一定の期間、「いろんな曲が聴き放題」という「お得感」が受けているのだと思う。
「●●放題」のサブスクは確かに、消費者にはわかりやすく受け入れられやすい。支払う料金がそのお得感に見合った、あるいはそれ以上の価値があると認知さやすい業態にはとくに、効果的だ。
クルマを購入する層に対しても、サブスクのサービスが採り入れられている。もちろん、音楽の「お得感」とは少し異なるかもしれない。定額で好きなクルマに乗り放題、というわけにはいかないようだし。そのかわりに、利用期間中にかかるさまざまな費用を車両本体価格と合わせて「定額化」するのが主流だ。
しかし実はこれ、意外にわかりづらい。なにしろその期間に支払う金額が、お得感に見合っているのかどうかが、シロウトには少々計算しづらいからだ。携帯電話の「コミコミ」的な料金体系にどちらかと近いようにも思えるが、かかる金額が二けた違う。
さらにはリースとの違いも、実は明確ではないように思える。オフィス機器などの場合はサブスクのほうが、契約的により自由度が高いというメリットがあるらしい。だが自動車の場合は、その差別化が微妙になってくる。
カーライフのありようまで変えるかもしれない
そういう意味で2019年から「KINTO ONE」と名付けたサービスからスタートした「KINTO」が、一般消費者にどのように受け入れられているのどうかは、ちょっと興味深い。日本における本格的な、クルマ関連サブスクサービスの草分けだが、当初はかなり苦戦していたと聞く。
それでも長期プランや解約金フリープランの追加設定や、カスタマイズを中心とするパーソナライズのサービスを盛り込んでいったり、独自の特別仕様車を取り扱い、キャンピングカーとのコラボを進め、中古車まで販路を広げるといったサービス多様化作戦は功を奏しているようだ。
取り扱い車種が増えていくとともに、モビリティサービスの利用を開始、旧車系などのコミュニティづくりにも積極的に取り組むなど「KINTO」としての活動は確かに、リースやカーシェアなどの業態とは一線を画しつつある。
ちなみに2021年1月に発表された「直近の実績」では、申込数は順調に推移しているという。2020年7月から12月までの期間では、前年同期間に比べて申込数は6倍に達している。2021年4月から2022年3月までの決算公告では、売り上げが前年比207%の101億円超を記録。利益的にはまだ赤字ではあるものの、事業規模としては着実に伸びているようだ。
それではこの3年ほどの間に、クルマのサブスク利用に対する意識や認知は、現実として高まりつつあるのだろうか。株式会社KINITOが実施した意識調査からは、物価高騰・商品価格値上げといった社会環境の変化とともに、クルマに対する消費の在り方が変化している様子が見て取れる。
そして調査結果からは同時に、サブスクサービスに対する利用者側の迷い?あるいは戸惑い??に似た意識が伝わってくるようにも思えた。