戦車の名門ドイツが21世紀に向けて開発したレオパルト2
以前に紹介したように、第二次世界大戦(WW2)後の最強戦車と称され実績があるのは、アメリカ陸軍のM1 エイブラムスだ。しかし、エイブラムスは動力装置が一般的なディーゼルエンジンでなくガスタービン式と特異なため、燃費やパーツの互換性、メンテナンスに高度な特殊性が求められることから「国際標準」にはなりえない戦車だった。
経済力が高い西側諸国でも、自力で戦車を開発できる国は少ない。その中で突出した開発・製造力があるのはWW2で旧ソ連と苛烈な戦車戦を繰り広げたドイツだった。戦車の名門ドイツが21世紀に向けて開発したのがレオパルト2(以下、レオ2)なのだ。
現代の主力兵器はWW2以降から数えて何世代という分類をする。レオ2は第3~3.5世代MBTと呼ばれる。世代が違うと「勝負にならない」と考えてもらって間違いない。レオ2は、先代レオパルト1(以下、レオ1)シリーズ(生産は1965~75年頃)の後継として1979年に量産配備され、2023年現在も最新MBTだ。
当初の特徴は何と言っても、旧ドイツ陸軍が誇ったタイガー I 戦車を彷彿させる巨体と重厚な垂直装甲にある。先代レオ1に代表される第2世代戦車までの車体は、WW2後期から踏襲された避弾経始設計が主流だった。避弾経始は、車体の装甲板を傾斜または球面状にすることで、敵砲弾を跳弾させたり有効装甲厚を増やす設計をいう。
しかし1970年代、旧ソ連戦車がHEAT弾(成形炸薬弾)やAPFSDS弾(装甲を貫く徹甲弾の一種)といった従来の砲弾と一線を画す強力な対戦車砲弾を高初速の滑腔砲から撃ち出すようになり、また対戦車ミサイルが発達すると、傾斜装甲や球面状の避弾経始では防御できなくなり、戦車の装甲は大幅な見直しが図られた。
高速の新型対戦車弾対策には、異なる材質の装甲板を複層にする複合装甲や中空装甲と、着弾と同時に主装甲の表面に張ったブロック状の炸薬が爆発し、敵弾を吹き飛ばす爆発反応装甲が有効となった。前者を車体設計段階から本格的に採用したのが、第3世代MBTのレオパルト2なのである。以上の経緯から、レオ2ではWW2前期まで見られた垂直装甲が復活し、名戦車タイガー I を彷彿とさせる無骨で重厚なフォルムは、戦車ファンに驚きを与えた。